丹羽宇一郎・駐中国大使--早期に農業問題を片付け日中韓の共同市場実現を
7月31日、丹羽宇一郎・駐中国大使が北京に着任した。民主党政権の「政治主導」人事による、民間からの異例な起用だ。丹羽氏は伊藤忠商事の社長時代に不良資産処理を断行して名を馳せ、その後は経済財政諮問会議の民間議員などを歴任した、財界有数の論客だ。「民間人大使」への期待と不安が混在する中で、北京に単身乗り込む格好の丹羽大使。日本の対中外交をどう改革しようとしているのか。
--初の民間出身者として駐中国大使に選ばれたことを、どう受け止められていますか。
世界が多極化していく中で、二国間の利害調整だけでは日中関係も成り立たない。日中のみならず、幅広い国との接点を持つことが、日本の国益を守るうえで重要になる。新しい外交のあり方に対応するために、過去のしがらみがまったくない人間を置くのは一つの方法だ。
地方分権改革推進委員会などでの経験から言って、官僚には「国益よりも省益」という意識が強い。外交では国益が第一。そういう意味で、私の人事は改革への一つの試金石になるだろう。若手は省益のため一所懸命でも仕方ないが、幹部は国益を優先すべき。そうした観点から、大使館の中でも信賞必罰をはっきりさせたい。
--日中関係の課題は。
国の力は軍事力、経済力、プラス政治力で決まる。第一に日本は、経済力をつけていく必要がある。日本製品は安全、安心と品質で世界中から高い評価を受けている。しかし、量も確保しないといけない。
そのためには、量的に大きく拡大する中国市場がカギになる。中国との経済連携をもっと強化したい。まるで日本国内の市場のように、中国との間で人や企業が自由に行き来できるようにすべきだ。