「楽して儲けるのは悪」と思い込んでいる人の盲点 苦労の少ない成功は、物語になりづらいだけ

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プレゼンを開始したとたん、これはまずいと思った。イントロの話は聴衆に響かなかった。スライドは頭に入っておらず、何度も振り返って内容を確認しなくてはならない。話の内容とスライドの表示がまったく合っていないところもあった。

大失敗だった。ほとんどパニックになりながら部屋を出た。最高のチャンスを与えられたのに、台無しにしてしまったのだ。

残りの2つのプレゼンテーションは、顧客側からキャンセルされた。もちろん契約は白紙になった。

あのときのことを思いだすと、今でも顔を覆いたくなる。最悪の失敗だ。いま振り返ってみれば、何が間違っていたのかは明白だ。

成果を焦るあまりに、考えすぎた。そして、頑張りすぎたのだ。その結果、目の前にあったはずの成功を、ぶち壊してしまった。

この経験から得た教訓──頑張りすぎは、失敗のもとだ。

考えてみれば、子どもの頃からそうだった。努力が足りなくて失敗したことはほとんどない。いつだって、頑張りすぎて失敗していたのだ。

「頑張らなくてはダメだ」という信念が、私たちの社会には蔓延している。その結果、本来ならもっと簡単にできるはずのことが、どんどん困難になっている。

無駄に難しく考えていないか

大事なことをやり遂げるためには、2つの道がある。

1.人の限界を超えて働き、力ずくで不可能を可能にする

2.もっといいやり方を探し、余裕で成果を出す

どうせなら、疲れ果てて体を壊すよりも、余裕で楽しく成果を出せたほうがいい。

難しいのは問題そのものではなく、私たちの考え方かもしれない。簡単にできることを、無駄に難しく考えてしまっていないだろうか。

「どうすれば簡単にできるだろう?」と考えて、頭をリセットする。そうすれば、面倒な問題が驚くほどシンプルに片づくはずだ。

ひとつ、例を挙げよう。

サウスウエスト航空は創業以来、コスト削減と着陸から離陸までの時間短縮をビジネスデルの軸にしてきた。それを実現するうえで、紙の搭乗券は邪魔だった。ちょうど予約システムの電子化が普及しはじめた頃、同社は紙の搭乗券を廃止できないかと考えた。

そうすればコストが抑えられるし、印刷のために時間を取られなくてすむ。ただし、eチケットのシステムを構築するためには、初期費用として200万ドルが必要だった。

紙の搭乗券の廃止はビジネス存続のためにぜひとも取りたい戦略だった。だが、ローコストキャリアである同社にとって、200万ドルは大きすぎる出費だ。

いったいどうすべきか。経営陣は難しい判断を迫られた。

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