「楽して儲けるのは悪」と思い込んでいる人の盲点 苦労の少ない成功は、物語になりづらいだけ
頑張れば成果が出るとはかぎらない
私たちは大事な仕事に持てる時間とエネルギーのすべてを注ぎ込み、時には心の健康さえも犠牲にする。まるで自己犠牲にこそ価値があると言わんばかりだ。
重要な仕事は困難で、簡単な仕事は取るに足りないものだと、多くの人が思い込んでいる。「血、汗、涙」をしぼって働くのが価値のあることだとされ、「苦労して勝ちとった」勝利こそが尊いといわれる。
「大変だがやりがいのある」仕事に価値が置かれ、「楽して儲ける」のは悪いことのように扱われる。
こうした思い込みは根深く、もしもそれを疑ったりしたら、気まずい思いをすることになる。いや、ほとんどの人が、苦労の価値を疑おうとしたことさえないのではないだろうか。
だが、あえて問いたい。
大事な仕事をやり遂げられない最大の理由は、まさに困難だからではないのか。そして何かが困難だと感じるのは、もっと簡単なやり方を見つけていないからではないか?
人の脳は、困難なことを避けて、簡単なことを好むようにできている。
認知容易性のバイアス、あるいは最小努力の法則と呼ばれるものだ。何かがほしいとき、人はもっとも苦労の少ないやり方でそれを得ようとする。日常生活でも、思いあたることがあるはずだ。
たとえば、遠くの安売りスーパーへわざわざ行くのが面倒だから、目の前のコンビニで割高な商品を買う。食器をすぐに洗うのが面倒で、シンクに山積みにしてしまう。子どもが食事中にスマホを触っていても、注意するのが面倒でつい見過ごしてしまう。ネットで見かけた情報をすぐに信じて、わざわざ情報元を確認したり詳しい情報を調べたりしない。
これらは、とても自然なことだ。
進化的な観点から見れば、こうしたバイアスは有利に働く。最小努力の法則は、人の生存に不可欠なバイアスなのだ。
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