中国とアメリカ、“G2”と呼ばれるほど密接ではない
中国は、カナダ・トロントで開催されたG8およびG20サミットで、外交面のしたたかさを発揮した。その1週間前に人民元の弾力化政策を発表し、人民元の安値操作をめぐるアメリカ議会を急先鋒とする国際的な非難を巧みにかわした。
そのサミットの前と最中で中国が見せた巧みな外交手腕とは、次の3つである。第1に、中国政府は人民元を急速に切り上げる意向をまったく示さなかったことだ。アナリストのほとんどは向こう12カ月に人民元は3%以上切り上げられることはないだろうと見ている。第2に、中国は米議会に高まっている強烈な保護主義感情を鎮めたが、それはほんの一時的にすぎない。第3に、米国と中国はG2と呼ばれるほど緊密ではない。G2とは、両国がグローバル経済や戦略的課題について緊密に協力し合うことである。
オバマ政権は何とも中途半端な立場に立たされている。というのは、中国を国際的に責任のある役割を演じるようにうまく仕向けたという評価を得たいところだが、それを証明する証拠はどっちつかずのミックスとなっている。
たとえば、今回中国が踏み切った管理フロート制である。中国は2009年に貿易黒字を2269億ドルにまで積み上げた。その結果、ここ数カ月間、人民元の切り上げ圧力にさらされてきていた。08年7月以来、人民元は対ドル6.83元に固定されたままだったが、それは実勢より25~40%過小評価されていると見られていた。
オバマ政権は計算ずくの柔軟姿勢で中国に対して政治的な余裕を与えることにした。すなわち、ガイトナー財務長官は4月15日に議会提出が予定されていた主要国・地域の為替政策に関する半期報告を延期することにしたのだ。その報告は中国政府が人民元を人為的に安く操作しているのではないか、つまり、中国を「為替操作国」かどうか認定するものだ。それを先送りしたのである。
その後、胡錦濤主席はオバマ大統領が主宰する核軍縮サミットに参加したが、その場で中国は、核兵器開発を公然と主張するイランに対して米国が主張する国連安保理による圧力についてある程度協力する姿勢を示した。そして、5月24~25日に北京で開催された第2回米中戦略経済対話には、クリントン国務長官、ガイトナー財務長官をはじめ総勢200人もの米政府要人が参加した。