疫病、災害、老後……。これほど便利で豊かな時代なのに、なぜだか未来は不安でいっぱい。そんな中、50歳で早期退職し、コロナ禍で講演収入がほぼゼロとなっても、楽しく我慢なしの「買わない生活」をしているという稲垣えみ子氏。不安の時代の最強のライフスタイルを実践する筆者の徒然日記、連載第35回をお届けします。
「激安名刺」を買うしかないのか?
前回、会社を辞めたがゆえに「自分のカネ」で名刺を作らなきゃならんという人生初の事態に直面し、収入のあてもない身としては当然のことながら1円でも安くあげようとネットで目を三角にして激安名刺情報を検索しまくり、しかしそうこうするうちに、その激安名刺を売っている方々の過酷すぎる競争ぶりに「これはもしや明日の私では……」と、どうにもやりきれぬ気持ちになり……という顛末を書かせていただいた。
そうなのだ。会社という後ろ盾を失ってみて初めて、私は大変遅まきながら、この過酷すぎる競争社会を生き抜くための仁義なき戦いをリアルに実感し、その中に否応なく巻き込まれていく自分に恐怖したのである。
しかし、そんなことにひるんでいる場合ではなかった。これが現実なのだ。いくら厳しくともつらくとも、ここから逃げることはできないのである。そのためには何はともあれ、まずは心を鬼にして経費を節減するしかない。つまりは最も激安な名刺を買うしかないではないか!
……いや、そうなのか?
本当にそれしかないのだろうか?
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