「最安値を求めてネット検索」をやめた私が得た宝 「1枚50円の名刺」がわが人生を劇的に変えた訳

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でも、もしやそうじゃない世界ってものがあるのでは? お金は貯めこむものでなく、うまく「流して」いくことが肝心なんじゃないのか? 

稼いだ金を、自分の暮らしをよくしてくれる人のところへ「ちゃんと」流す。さすればその人は今後も私の暮らしをよくしてくれる。そうなれば相手も私もハッピーなのである。

でも、相手を泣かせて自分だけハッピーであろうとしたら、つまりはこれまでの自分のような、相手を損させて自分がトクするような態度を取っていたらどうなるだろう? 

確かにその瞬間は自分はハッピーかもしれない。でもそれは長くは続かない。自分がハッピーでいるために相手はどんどん痩せ細り、ついには消えてしまう可能性が高い。そうなれば元も子もないではないか。

でもそうじゃない方法、それとは真逆の行動を取ってみたら?

自分がトクをするように行動するのでなく、自分を支えてくれる相手がトクするように行動する。もちろん、その結果自分がやせ細って消えてしまってはまさに元も子もないので、できる範囲で無理なくやるしかない。でもそれでもいいから、精一杯、そのような心意気で生きていけばいいんじゃないだろうか?

貧乏からも孤独からも無縁に

こうして私は、「1円でも安いもの検索」からほぼ足を洗うことができたのである。「奪う」人から脱却し、「あげる」人になったのだ。

その先には豊かな人間関係がどこまでも広がっていた。何しろ一人ぼっちだったあの時から、このような心がけの結果、いざという時に助け合えるレベルの「知り合い」となった人は数百人を超えるのだ。何の後ろ盾のない身でこのような大きな結果をわがものとすることができたのは、あの印刷所のお母さんのおかげである。

しかも、当初考えていたのと違って、自分がどんどん貧しくなっていくわけじゃなかった。自分が「あげた」お金は、回り回って自分に返ってくるのである。というか、回り回って自分に返ってくるような生き方をしていこうと心がけていけば、どうにかこうにかちゃんとそうなっていくのである。

こうして私は貧乏からも孤独からも無縁となった。貧乏をとるか、孤独をとるか、などという選択は不要だったのだ。思いもよらぬ結果であった。

稲垣 えみ子 フリーランサー

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いながき えみこ / Emiko Inagaki

1965年生まれ。一橋大を卒業後、朝日新聞社に入社し、大阪社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめる。東日本大震災を機に始めた超節電生活などを綴ったアフロヘアーの写真入りコラムが注目を集め、「報道ステーション」「情熱大陸」などのテレビ番組に出演するが、2016年に50歳で退社。以後は築50年のワンルームマンションで、夫なし・冷蔵庫なし・定職なしの「楽しく閉じていく人生」を追求中。著書に『魂の退社』『人生はどこでもドア』(以上、東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。

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