
ブックカフェで知り合った近所のおばあさまに、庭のカキをおすそ分けしていただく。地下経済ではこの季節になると頻繁にカキが飛び交うのであった(写真:筆者提供)
疫病、災害、老後……。これほど便利で豊かな時代なのに、なぜだか未来は不安でいっぱい。そんな中、50歳で早期退職し、コロナ禍で講演収入がほぼゼロとなっても、楽しく我慢なしの「買わない生活」をしているという稲垣えみ子氏。不安の時代の最強のライフスタイルを実践する筆者の徒然日記、連載第32回をお届けします。
「あげる」が「もらう」に転化する日
収納のない家に引っ越してしまったばっかりに、使わぬものは急いで人様にさしあげなければわが家がたちまちゴミ屋敷化するという人生初のピンチに直面しまして、結局、数日に一度は何の名目もないのに誰かに何かをせっせと差し上げまくるという、何ともフシギな生活が始まった経緯を前回、詳しく書かせていただいた。
で、そんなことがすっかり当たり前になったある日のこと。
突然、モノゴトが逆流を始めた。
「もらう」日常が、何の前触れもなくスタートしたのである。
それは最初、非常にささやかな形で始まった。
わが「あげる」リストに掲載されている店に行くと、なんだかんだとオマケをくれる。
豆腐屋ではお揚げを2枚買えば3枚包んでくれる。米屋ではお釣りの端数をカット……こちらも何かを差し上げているので常識の範囲内といえばそうなんだが、何しろこちらは、自分では使い切れない頂き物などを横流ししているにすぎない。それで何かをゲットできてしまうのは、何だかありがたくも申し訳ない気分である。
だが程なくして、モノゴトはどんどんエスカレートを始めたのだった。
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