「毎年20トン売れる焼き芋」を作る限界集落の衝撃 「宮下さんちの焼き芋」全国で愛される理由とは
サツマイモの種類は、当初は安納芋を使っていたが最終的に紅はるか(2010年品種登録)にたどり着く。焼き芋にしたときの糖度は50度以上にもなる。
「焼き芋は冷えると硬くなります。紅はるかはねっとり感が強くて、冷めても硬くならずにしっとりしていておいしい。家族でいろいろ試したけどこれが一番でした」
リピーターと口コミの力で全国で愛される商品に
昔のホクホクした焼き芋しか馴染みのなかった人たちにとって、宮下さんちの焼き芋の滑らかな食感や甘さは驚きだったようだ。
「焼き芋を気に入ってくれたおばあちゃんから『あんたげの(あなたのところの)焼き芋は、はちみつを混ぜちょっどが』なんて言われたりしました(笑)」
人気が広まっていき、垂水市内のスーパー3店舗、道の駅、鹿児島市内のスーパーと販売網が拡大。売上増に伴い、サツマイモは自家農園だけでなく、鹿児島の契約農家から購入する体制を整え、毎年サツマイモのシーズンには20トン以上もの芋を焼く。わずか10パックで始めた小商いが、宮下商店の商売の柱になっていく。
宮下さんちの焼き芋が今に至るまで、一貫して大きく影響してきたのはリピーターと口コミの力だ。一度食べてファンになった人が定期的に買い求め、さらには周囲の人にも勧める。「あの人にも食べさせてあげたい」と県外に住んでいる家族や知人に送り、そこを起点に県外からの問い合わせも増えていった。
「電話で問い合わせがきて『東京にも送ってもらえますか?』と。最初は県外の人がなぜ知っているのかと不思議に思っていましたが、聞いてみると、誰かからもらったり評判を聞いたりして注文してくれたみたいです」
県外からの問い合わせ増を受けてネットショップをオープン。ふるさと納税での取り扱いも始まった。
ネットショップオープン後も、電話やFAXの注文方法はそのまま。年配の方はネットに不慣れな人も多いからだ。実際7:3で電話注文のほうが多い。焼き芋シーズンだと一日10件以上の電話に対応。
「常連の人は注文だけでぱっと終わる人も多いけど、初めての人だと質問に応えたり説明したりして10分くらい。結構時間がかかるんですよね。でもそこでお客さんの希望を聞いたり、『おばあちゃんに送ってあげたい』とおっしゃっていたから早く送ってあげようとか、こっちも融通を利かせて対応できます」と、あくまでも一人ひとりの注文に丁寧に応じている。
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