震災被害と戦う「熊本の秘湯」復興までの4年間

「地震被害は4年くらいでは何も片付かない」

左から河津家長男で代表取締役の誠さん、次男の謙二さん、三男の進さん(筆者撮影) 
熊本県南阿蘇村の山奥にある静かな秘湯・地獄温泉。湯治場として200年以上病気やケガに悩む多くの人々を癒してきた歴史ある名湯だ。しかし、2016年4月に発生した熊本・大分地震、さらに同年6月の集中豪雨と、度重なる災害によって大打撃を受けた。被害総額は約20億、施設の7割は土砂の中という絶望的な状況である。
しかし、そんな困難を前にしても諦めずにひたすら復興に向けて動いてきた地獄温泉は、震災から約3年で日帰り入浴を再開。4年目の今年は宿泊再開を目指している。ゼロどころか大きなマイナスからの再出発は途方もない道のりだったはず。これだけの苦境を前にして、前に進む原動力はどこから湧いたのか。被害の経緯と復興への思いを取材した。

度重なる災害で「約20億円」の損害

「地震だけだったら、もっと早く営業再開できたでしょう。その後の豪雨が致命的でした」

そう語るのは代表取締役の河津誠さん。地獄温泉は河津家長男の誠さん、次男の謙二さん、三男の進さんが中心となって運営している。

2016年4月16日の熊本・大分地震の本震で施設が損壊した地獄温泉は、周辺道路が寸断され、当時51人いたスタッフと宿泊客はヘリで救助された。この地震による被害で水道や温泉のパイプはほぼすべて破損し、浴槽や床にヒビが入る。落ち着いたころ、河津さんらは連日避難所から修復作業に通った。

しかし、本震から約2カ月後、2016年6月20日夜から6月21日未明にかけて九州各地を記録的な大雨が襲う。熊本各地で河川の氾濫や土砂災害などが発生し、地獄温泉背後の夜峰山(よみねやま)では大きな土砂崩れが起きた。

「大雨の後、役場から状況がよくないと連絡が入りました。兄弟3人で歩いて様子を見に行ってみたら、土石流がまるで川のようにあたりをのみこんでいて……。旅館は土砂で埋もれてみるも無残な状態でした」

泥を搬出して改修中の旅館。赤い矢印の部分に注目してほしい。この柱の色が変わっている部分までが土砂で埋もれていた(筆者撮影)

2カ月かけてパイプや浴槽の修復を進めてきて、ようやく光が見えてきたところだった。

「それでも、いちばん被害の大きかった泉源の元地獄・たまご地獄を見に行くと、土砂の隙間からぷくぷくと源泉が湧き続けていたんです。その様子を見て『よし! もう一度頑張るか』と決意しました」

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