安河内:中学は普通の公立だったんですか?
松本:国立(こくりつ)です。
安河内:あっ、国立の中学だったんですね。地域はどちらですか?
松本:東京です。
安河内:でも、授業は普通に日本人の先生が日本語で行うものだったんですよね?
松本:いえ、先生は日本人でしたが、英語で授業していました。
安河内:え、オールイングリッシュ!? 当時としてはすごく珍しいですよね?
松本:そうですね。授業中は基本的にほぼ英語のみでした。
安河内:ということは、過去形とか過去分詞形とかいった言葉も習わなかったわけですか?
松本:そういう文法用語は教わらなかったですね。ただし、今のオールイングリッシュの授業とはちょっと違っていて、キーセンテンスの一部を変えながら口に出していく指導法でした。ですから文法用語は知らないけれど、現在形の文を過去形に変えるといったことは、スムーズに口から出るようになりました。
安河内:パターンプラクティスというやつですか?
松本:そうです。たとえば先生が「男の子とオレンジがいくつか描かれた絵」を持ちながら「like」と言うと、最初にあてられた子はHe likes oranges.と声に出します。そして、つぎに先生が「She」と言うと、次の生徒はShe likes oranges.と口にする。さらに次の子に向かって先生が「not」と言うと、その生徒はShe doesn’t like oranges.と言う。次に絵がリンゴに変わると、生徒はShe doesn’t like apples.と言う。こんなことを延々と続けていくわけです。
安河内:そうですか。実は私は、日本人が英語を学ぶ環境では、まずパターンプラクティスで自動化をしたうえで、社会環境に適合する応用性を身に付けたほうがいい気がしているのです。松本先生はその道で英語をやってこられたのですね。
松本:いや、“道”なんて大それたものではありません。特に優秀な生徒だったわけでもないですし……。ただ何やっているのかよくわからないけれども、口から英語が機械的に出てくるようにはなりましたね。ほかの優秀な子たちは、家や塾でちゃんと勉強していましたから、もっと自由に英語を口にしていましたけれども。
安河内:じゃあ、先生は中学のときは、英語は得意じゃなかったと? 当然、トップの成績だと思っていたのですが……。
松本:まったく得意ではありませんでした。英語に対して興味すらありませんでした。それでも中学のときはまだよかったのです。高校生になったら教科書が研究社の「New Age Readers」というのになって、中学の教科書とは比べものにならないほど英文が難しくなった。
高校で英語が苦手になるも、高3で運命の出会いが!
松本:高校の英語の授業は担当の先生の間で一貫した教え方というのがなかったですね。先生によって教え方がまちまちだったのです。だから、グラマーを重点的にやる先生、かなりオーラル的にやる先生、和訳ばかりさせる先生などが混在していました。
私としては最初、高校からは英語を頑張るつもりでいたのです。ですからLesson 1に関しては、知らない単語の意味調べの予習をしました。単語帳も作ったのですが、最初のレッスンだけでわからない単語が60もあってね。Lesson 2からはノートは真っ白になってしまいました(笑)。
安河内:今の中学生、高校生でもそういう子、けっこういますね(笑)。
松本:残り数分で授業が終わるというときに、前の席から順番に指名して答えさせるのですが、いつの日からか、私だけ飛ばされるようになったんです。「松本に当てると授業が時間内に終わらなくなる」ということでね。
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