「首の皮一枚」日本代表が背負う経済的重圧の正体 「4年の1度の特需」が失われた場合のダメージ

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ベトナム戦に向け、調整する日本代表(写真:共同)

2022年カタールワールドカップ(W杯)ベスト8の大目標を掲げ、2018年9月に発足した森保一監督率いるサッカー日本代表。しかし今年9月からスタートしたアジア最終予選で予期せぬ苦境に立たされている。

つまずきの始まりは、9月2日の初戦・オマーン戦(大阪・吹田)だった。過去の予選で一度も敗れたことのないW杯未経験国にホームで0-1の苦杯を喫したのは大誤算というしかなかった。

続く7日の中国戦(ドーハ)は1-0で勝利したものの、翌10月シリーズも7日のサウジアラビア戦(ジェッダ)を0-1で落とし、早くも2敗目。崖っぷちに立たされた12日のオーストラリア戦(埼玉)は劇的な形で2-1の勝利をもぎ取り、森保監督も「俺たち、生き残ったぞ」と試合後の円陣で選手たちに雄叫びを上げた。とはいえ、首の皮一枚つながっている状況には変わらないのだ。

今日11日には第5戦・ベトナム戦(ハノイ)が行われるが、キャプテン・吉田麻也(イタリア1部・サンプドリア)ら欧州組11人が乗ったオランダ発のチャーター便がロシアでの給油トラブルに見舞われ、現地入りが9日深夜になってしまった。彼らが全体練習に合流できたのは10日の前日だけ。現地で入念な準備をして待ち構えるベトナムは、調整不足の日本の足をすくうべく、虎視眈々と狙ってくるだろう。

ワールドカップ出場を逃した場合の経済的影響

この関門を突破できたとしても、16日の次戦・オマーン戦(マスカット)も過酷なアウェーの勝負になる。11日の中国戦をUAEのシャルジャで消化する相手は移動負担がほぼないが、日本は長距離移動を強いられるうえ、最高気温30度近い暑さの中で戦わなければならない。

11月シリーズで勝ち点6を取れなければ、カタールW杯自動出場権を得られるグループ2位以内はおろか、大陸間プレーオフに回る3位確保も危うくなってくる。日本がここまで追い込まれたのは、1998年フランス大会でW杯初出場を果たして以降、初めてと言っても過言ではない。

万が一、W杯を逃すようなことがあれば、経済的なマイナス効果は避けられないだろう。日本サッカー協会が発表している2021年収支予算書によると、代表関連事業収益は32億7199万円。コロナ禍の観客制限などが響いて、ロシアW杯が開催された2018年の51億7875万円に比べると20億円近い減収になっている。カタールに行けなければ、2022年以降の減収幅がさらに拡大する恐れもないとは言えないのだ。

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