「首の皮一枚」日本代表が背負う経済的重圧の正体 「4年の1度の特需」が失われた場合のダメージ

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それでも、今年4月には英国製高級スーツケースメーカーのグローブ・トロッターとアパレルプロバイダー契約を締結し、5月にはトーヨータイヤがサポーティングカンパニーに加わるなど、現時点では「日本代表ブランド」に一定の評価があるようだ。

目下、日本代表の協賛企業は、オフィシャルパートナーのキリングループ、オフィシャルサプライヤーのアディダスグループを含め、10社を超える。みずほ銀行や日本航空などの大企業がサポートを続けているのも、W杯過去6大会連続出場の価値を理解しているからに他ならない。

実際、W杯日本戦のときは毎回のように渋谷のスクランブル交差点に歓喜の渦ができるほど、日本中が盛り上がる。スポンサーの露出効果が高まるのも事実。「サッカー界を応援したい」という各社の熱意はもちろんだが、「4年の1度の特需」が支援継続の1つの原動力になっているのは間違いない。

それがなくなれば、スポンサー料の減額や契約打ち切りといった話が浮上してもおかしくない。日本サッカー協会やサッカー界の屋台骨を揺るがす一大事になりかねないだけに、最悪の事態を絶対に阻止しなければならないのだ。

サッカー人気に陰りが出てきたワケ

実際のところ、サッカー人気は自国開催の2000年代をピークに低下傾向をたどっている。2002年日韓W杯の日本対ロシア戦で66.1%という驚異的なテレビ視聴率を記録したとおり、日本代表戦は長年、キラーコンテンツと位置づけられてきた。

しかしその後の有料放送化やインターネットの普及などメディア環境の変化によって、そこまで数字が取れなくなり、注目度も徐々に下がってきた。本田圭佑(リトアニア1部・スドゥバ)や香川真司(ギリシャ1部・PAOK)らスター選手が去った2018年以降はその現象に拍車がかかったと言われている。

代表の停滞感は、サッカー関連ショップやビジネスの経営にも少なからず影響していると見られる。協会と関わりの深い1968年創業の老舗専門店「サッカーショップKAMO」も、コロナ禍の煽りを受け、今年に入って大阪・心斎橋、横浜・港北、金沢の3店舗を閉店。9月末には都内主要店舗である新宿店のクローズに踏み切った。

流通業界のECサイト拡大の流れに沿った部分もあるのだろうが、日本代表の躍進とともに店舗拡大を続けてきたKAMOの規模縮小には一抹の寂しさを拭えなかった。

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