コロナ禍、困窮、特殊詐欺…低賃金は社会を壊す 『ルポ 低賃金』東海林智氏に聞く

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『ルポ 低賃金』著者の東海林 智氏
東海林 智(とうかいりん・さとし)/毎日新聞社編集局社会部記者。1964年生まれ。一貫して労働と貧困・格差の現場を取材している。2008年12月31日から09年1月5日まで開設された年越し派遣村の実行委員を務めた。著書に『15歳からの労働組合入門』、『貧困の現場』など。(撮影:梅谷秀司)
労働担当の記者になった2004年から20年となる節目の年に書き下ろした。なぜ、低賃金をテーマに据えたのか。

低賃金による日本社会の現状

ルポ 低賃金
『ルポ 低賃金』(東海林 智 著/地平社/1980円/240ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──本書は「特殊詐欺の冬の花」から始まります。

低賃金による日本社会の壊れっぷりを象徴する話、いちばん書きたかったことを最初に持ってきた。

きっかけは20年6月。新聞社のデスクとして、事件担当記者が出稿した特殊詐欺の記事の原稿を読んだ。特殊詐欺は年間2万件近く起きており、記事は目立たぬベタ記事扱い。だが、違和感を覚えた。逮捕された「受け子」が21歳の女性だったからだ。女性が特殊詐欺で逮捕されるケースはそう多くない。

その女性は警察の取り調べに「新型コロナウイルスの影響で、4月に入って派遣の仕事がまったくなくなり、生活に困ってやった」と供述している。女性は実質的に日雇いの派遣労働者だった。

「受け子」は逮捕される可能性が最も高い。詐欺グループ全体のことは知らされておらず、逮捕されても上層部には捜査の手が及ばないようになっている。つまり彼女は最下層の詐欺犯だった。

──その後、歌舞伎町の風俗店店長の紹介で、特殊詐欺に関与した別の女性を取材します。

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