三島由紀夫『命売ります』は、自らの命を商品化するという発想自体が奇妙きてれつなうえに、羽仁男の元を訪れる「命購入希望者」たちも、なかなか強烈な顔ぶれである。
それは妻を寝取られた老人、人体実験を代理で受けてほしい図書館職員、吸血鬼の母を持った少年、巨大な陰謀に巻き込まれたA国の大使。さらに彼らに加えて、羽仁男を狙う秘密組織の人々が絡んで、とにかく大忙し。
一人ひとりの依頼者にまつわる小さな物語は完璧な「起承転結」で構成されており、推理小説、怪奇小説、恋愛小説、ホラーなどの要素が巧みに織り交ぜられているので、読んでいて気持ちがいい。さすが三島、娯楽作品といえどもまったくぬかりがない。
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