ロールス・ロイス初のBEV(電気自動車)として誕生した「スペクター」に日本の公道で試乗する機会を得た。もっとも感心したのは、BEVになってもロールス・ロイス像を少しも崩していなかったことだ。スピードメーターの左側にあるパワーリザーブメーターは、内燃機関モデルと同じくアクセルペダルを1mm踏み込むごとに1%ずつ敏感に、そして正確に反応する。
もっとも「1mmで1%」は筆者の操作イメージだが、それほど滑らかに3tに迫ろうとする巨体は微かに増速する。しずしずとドライバーの意を汲みながら走る、これが筆者のこれまでに体感してきたロールス・ロイスなのだが、スペクターは見事なまでにその相似形であった。BEVだからなにか新しい機構を採り入れるべきだとか、内燃機関で培ってきた概念を覆すなにかを無理に詰め込んだりすべきだとか、そういった“あるべき論”が一切ない。
初のBEVもオーダー状況は順調、新たな顧客層も獲得
もっともこれを“頑な”と捉えるか、良いものはひとつであるとする“哲学”と受け取るかはユーザー次第だ。しかし、少なくともスペクターはこれまでのロールス・ロイスユーザーから好意的に受け止められ、さらに30~40代の若い、そして新しいユーザー層の獲得にも成功した。その証しとして、すでに2025年までのオーダー枠が埋まっているという。
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