苫小牧の「国家石油備蓄基地」に行ってきた

原野に広がる、「もしも」に備える巨大タンク群

タンク群は海岸からは6キロほど離れた、森林を切り開いた土地にある。残されている林には今も、キツネやウサギ、リスがいるそうだ。基地が内陸部にあるのは、使い勝手のいい沿岸部は民間企業のためにと空けておいたからだ。中東からタンカーで運ばれてくる原油は、海底部分3キロ+陸地部分6キロ、計9キロの長さのパイプラインを通ってタンクに到達する。

当然、雪国特有の検査が必要

火気厳禁ですと念を押され、タンクに近付いてみる。容量が11万4800キロリットルのタンクは遠くから見てもかなり大きいが、近付くと一層、大きく感じる。高さは24.5メートルで8階建てのビル相当、直径は82メートルで、この円の面積は阪神甲子園球場のグラウンド部分と同じくらいだ。外壁に沿って付けられた階段は128段ある。都内を地下鉄で移動する方ならご存じの永田町駅の、半蔵門線から有楽町線の乗り換え通路にある途方もなく長い階段ですら96段だ。

この巨大タンクが、タンクの直径と同じかそれ以上の間隔で、88基並んでいる。

こんな景色は、今まで見たことがない。なにしろ、タンクの周囲は林で、その向こうには山が見えて、比較対象になる建物が視界に存在しないのだ。ときおり敷地内を走る車と比べようにも、車があまりにも小さすぎる。

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円形タンクの円部分の面積は甲子園球場のグラウンドと同じくらいの大きさがある

タンクの周辺は土地が数メートルかさ上げされている。つまり、道路から見ると、タンクは低い場所に置かれている。これは、万一、原油がタンクから漏れてもそれを周囲に拡散させないための措置である。

タンクの構造は、ダブルデッキ浮屋根方式である。ダブルデッキとは、屋根が二重構造になっていることを意味する。二重になった屋根の隙間に空気を入れることで大きな浮力を生じさせ、重さ840トンある屋根を、たとえその上に雪が積もったとしても、原油の上に浮かせられるようにしている。屋根と内壁の間はウレタンフォームでシールされている。壁の厚さは、下部が37ミリで上部が12ミリ。

屋根の高さはタンク内の原油量に応じて変化するので、あまり入っていなかったり空だったりするタンクを上から見ると、屋根部分が低くなっている。この様子も、グーグルアースでも確認できる。

すべてのタンクがフルになることはない。タンクには、原則として8年に1度、中を空にしての検査が義務づけられているため、常に、57基中7基程度は検査中なのだ。

点検項目は多岐にわたるが、そこには、ほかの備蓄基地にはない項目も含まれる。言うまでもなく北海道は雪国で、苫小牧にも冬になれば雪が降るので、タンクは車などでいう「寒冷地仕様」になっている。屋根には積もった雪が偏らないよう構造に工夫がされ、配水管にはいちいち水を落とす(凍結防止のための水抜きのこと)必要がないよう、ヒーターが付けられている。設備が多ければ点検項目も増える。そして、冬場は雪のため作業ができないので、点検は4月から11月の間に集中して行われる。

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