火災対策設備としては、タンク1基ごとに、固定泡消火設備14台が設置されており、火災感知器も33カ所に配置されている。現在、苫小牧東部国家石油備蓄基地では連続460万時間以上、無災害記録を継続更新中である。
実は今回、タンクの大きさや土地の広さもさることながら、最も驚かされたのは、無災害への徹底した取り組みについてだった。タンクごとに消火設備を持たせたうえで、さらに本格的な消火設備を持っているのだ。化学消防車や化学高所放水車、貯水池や貯水槽は当たり前。もっとすごいものがあった。
10時間以内の消火が義務
「タンクで火災が発生した場合、10時間以内に消火することを石油コンビナート等災害防止法で義務づけられています。13時間後にはボイルオーバーの可能性がありますから」
副所長で公務安全課長も兼任する佐伯吉朗さんが言う。
ボイルオーバーとはこういうことだ。
巨大タンクには、原油だけでなく水も入っている。シールしているとはいえ、屋根は原油に浮いているので、どうしても雨水が入り込むのだ。水は原油より比重が重いため、底に溜まる。
その状態でタンクから火が出たとする。原油は揮発しやすい成分から気化して燃えていき、熱せられた重い成分はタンクの下へ下へと沈み込んでいく、するとある瞬間に、タンクの底にあった水にも熱が一気に伝わり、加熱される。水が水蒸気になると体積は約1700倍になるが、これが一変に起こると、水蒸気爆発を引き起こす。この事象をボイルオーバーと呼ぶのである。
そのボイルオーバーを未然に防止するのが、毎分5万リットル、つまり毎秒830リットルと、1秒で家庭用の浴槽を4つほど満水にする速度での放水が可能な大容量泡放水砲システムだ。
システムを構成する装置は、大容量資機材倉庫と呼ばれる建物の中に置かれていた。
20フィートコンテナサイズ(長さ6058ミリ×幅2438ミリ×高さ2591ミリ)に収められた大容量のポンプや、通水時の直径が30センチで一巻きで長さ150メートルのホース、泡の原液が入ったタンク、原液と水の混合装置、そして大砲を彷彿とさせる外見の放水砲が整然と並んでいる。放水砲は2門ある。単位が門であるところもまさに大砲だ。
装備はどれもピカピカだ。いざというときは、これらをクレーンで吊り上げてトレーラーに積んで出動し、火災現場でシステムに組み上げ、消火活動に使うことになる。ポンプにも放水砲にも、すぐにクレーンで吊り上げられるようにフックが付けられた状態になっている。トレーラーが余裕を持って乗り付けられるよう、スペースもしっかり確保されている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら