これだけでは、単なるカラオケ番組になってしまいますが、『ザ・マスクド・シンガー』は“歌”と“推理”を掛け合わせているのが最大の特徴です。とはいえ、歌っている声やヒントで目星がつく簡単なもの。幅広い視聴者層を想定してか、難しさを追求していません。
大泉洋が快調なしゃべりで仕切り、それに応えるパネリスト陣のMIYAVI、Perfume、水原希子、バカリズムらの推理がむしろ視聴者を惑わします。水原が一貫して「バード(マスクドシンガーのキャラクター)は土屋アンナさん!」と答えていましたが、もはや当てに来ているのかそうではないのか、余計に混乱するほど。つまり、正解することよりも「もしかして……」と、想像の人物を気軽に誰かと言い合いながら楽しむエンターテインメント番組なのです。このハードルの低さゆえに、世界的な番組トレンドになっているほどウケているのです。
厳しいコメントが並ぶAmazonレビュー
では、肝心の日本での評価はどうでしょうか。Amazonレビューでは厳しいコメントも多数見られます。有名人の正体が明かされる見せ場で「Take it off!」の掛け声をかけ、オーバーリアクションの観客席の反応など、アメリカナイズされた番組全体の盛り上げ方に違和感を覚えた様子。これは否定できない部分があります。簡単な推理ゆえに「面白さが伝わらない」という意見もあります。
たとえ世界でヒットしている番組でも日本ではそのとおりにならないことはよくあること。熾烈な視聴率競争の中で作られた多種多様のバラエティー番組を取捨選択してきた日本の視聴者は、どの国よりも厳しい目を持っているとも言えます。そんななかで、『ザ・マスクド・シンガー』において日本独自の盛り上がり方があったことは注目すべき点です。
それはSNS上で“ファンアート”が拡散されていたことにあります。ファンがお気に入りのマスクドシンガー(キャラクター)を元に二次創作した“ファンアート”がSNS上に投稿されているというのです。これについてアマゾンスタジオ アジアパシフィックの責任者であるエリカ・ノース氏は「マスクドシンガーというキャラクターそのものに感情移入した結果。日本特有の番組ファンの育ち方があった」と分析しています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら