「『ザ・マスクド・シンガー』が世界で成功している理由のベースには、音楽やコスチューム、セットのビジュアル、推理の楽しさというものがありますが、感情に訴えかける要素があることはとても大事なことです。それによって番組と視聴者を固く結びつけ、ファンダムが育っていくのだと思います」(ノース氏)
結果、プロモーション効果にもつながり、アマゾンとしては日本版『ザ・マスクド・シンガー』を手がけた価値はあったと考えています。
アメリカやドイツでロングランヒット
そもそも『ザ・マスクド・シンガー』がどれぐらい世界で成功しているかと言うと、オリジナルの番組を制作した韓国最大手の放送局MBCが10月13日にフランス・カンヌのコンテンツ見本市MIPCOMで発表した数字によると、54カ国で展開されていることがわかりました。
2015年に韓国MBCで放送スタートした後、韓国国内でじわじわと人気を集めていき、その後、海を渡ってタイ版がヒットしたことを皮切りに2019年にはアメリカの4大ネットワークFOXでアメリカ版がスタート。それが世界的大ブレイクへとつながっていきます。FOXでは現在シーズン6まで制作され、最高視聴数660万人を記録しています。これはロングシリーズの人気ドラマなどと匹敵する数字です。さらに、アメリカだけでなく、世界各地でもヒットを飛ばし、ドイツではシーズン5まで制作されるほど人気を得ています。
世界各国で現地版が成功しているこうした背景が日本版を制作にするに至った大きな決め手になったこともアマゾンは明かしています。『バチェラー』などすでに海外ヒット番組を日本向けにリメイクし実績を作っていることも大きいのです。
「日本で話題になるコンテンツを作ることはアマゾンにとって大変重要なことです。そのために、日本のクリエイターをサポートすることも重要で、日本のエンターテインメント産業の一翼を担えるようになりたいと思っています」と、そんなビジョンがあることもノース氏への独占インタビューでわかりました。さらに、長期的にコンテンツ分野への投資を増やしていくことも示唆していました。
こうした制作事情を知らずとも楽しめる番組ですが、ドラマや映画のみならず、歌番組でも世界を凌駕する韓国発エンターテインメントコンテンツとして見る価値あり。ド派手演出が最高潮に達した最終話まで見届けたところで、さらに強くそう思います。
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