哲学者ニーチェが「道徳を最も嫌った」論理的理由 自分自身を誠実に打ち出すことこそが望ましい
「ニヒリズム」「神は死んだ」はニーチェ以前から存在
ニーチェは、ニヒリズムについて「絶対的な価値が消失すること」「絶対的な目的がなくなること」「絶対的な意味がなくなること」といった表現を使います。ニヒリズムという言葉は、もともとドイツのロマン主義者たちが使っていた言葉で、ニーチェが初めて使ったわけではありません。
ちなみに、有名な“神は死んだ”という言葉もニーチェが最初ではありません。ニヒリズムや“神は死んだ”という言葉は、ニーチェが最初に使ったように思われがちですが、言葉としてはすでに存在したものを、ニーチェなりに再定義して使っているのです。
ニーチェ以前のニヒリズムは、絶対的な価値といった言い方は使いません。どちらかと言うと、肯定的なものや華やかなものを求めず、虚無主義的な、あるいは斜に構えて否定的なというイメージが強く、特別な形で定義付けられてはいませんでした。それに彼は定義付けを行い、「絶対的な価値がなくなること」をニヒリズムと呼んだのです。
さて、「絶対的な価値がなくなる」といっても、ほとんどの人にとっては、それが何を意味しているのかがわかりにくいと思います。
しかし、「この世に絶対に正しいものはあると思いますか?」とか「絶対に良いと思うものは?」「絶対に悪いものは?」などの問いに対して、「そんなものは何もない」と答える人がいたとすれば、その人はすでにニーチェのニヒリズムを肯定していることになります。
その意味では、私たちはまさにニーチェがニヒリズムの到来を予言した、次の2世紀のまさにまっただ中にいるわけです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら