いい人すぎる「岸田"絹ごし豆腐"総理」に待つ苦難 「発信力」「コミュ力」は菅前総理より上なのか?

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最後の「いい人ゆえのカルマ」は「『いい人』の 第一印象は、なかなか覆せない」ことです。

⑥「いい人の第一印象」は、なかなか覆せない

第一印象は「一瞬」で決まりますが、「一生」を決めます。一度できた印象を覆すのは非常に難しい。そこには、「確証バイアス」と言われる認知の歪みが関係しています。

確証バイアスとは「自分の仮説や信念に合致した情報ばかりを無意識的に集めてしまい、反証する情報を無視する」こと。つまり、「優しそう」「優柔不断そう」というイメージが出来上がってしまうと有権者は、そうした側面ばかりに着目してしまうのです。

コーネル大学の教授は「第一印象は『自己充足的予言』のようなもの」と表現しています。何気ない表情やしぐさ、言葉でも、「やっぱり、私の思った第一印象のとおり、この人は〇〇なんだ」と解釈して、そのイメージを勝手に増幅していくというわけです。

つまり、フィルターやメガネのように、一度作られてしまうと、「『そのレンズ』を通してしか判断されなくなってしまう」わけです。

岸田氏は「今までのいい人」を脱却できるか

10月8日に行われた所信表明演説では、「早く行きたければ1人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」というフレーズを2度繰り返したほか、「革新」「改革」「打ち破る」「ぶち壊す」といった刷新をイメージする言葉は使わず、「絆」「分配」などの言葉を多用しました。

「競争」よりも「共創」。分断を生む弱肉強食の新自由主義を脱し、「新しい資本主義を実現する」とゴールは高邁ですが、その「理想主義的すぎるトーン」を懐疑的な目で見る人も少なくありません。「話を聞く」とモットーに、謙虚に丁寧にコミュニケーションをしようという姿勢は立派ですが、「聞いてばかりで、決断できない」というイメージにつながらないように気を配る必要もあります。

ある意味、岸田氏の言葉は「正論」なのでしょう。それが実現できれば、言うことはありません。ただ、「うそというものは、真実が靴を履いている間、地球を半周は旅することができる」というマーク・トウェィンの言葉があるように、この情報あふれる現代においては、「退屈な正論」は、往々に人々の心には刺さりにくいものです。

「派手さはない。でも、いつまでも、飽きることがない」。そんな「安定の味わい」 を醸し出すことができるのか。今、放映中の朝ドラの中に、伊達政宗公の家訓を記した額が登場していました。その一つ目が「仁に過ぎれば弱くなる」。優しさや思いやりが過ぎれば、弱くなるということ。これからは、「単なるいい人」を脱却し、時に、もっとずる賢く、もっと図々しく、もっと泥臭く見せる必要も出てくるでしょう。そこまで演じ切る「豪胆さ」があるのか、これからが正念場です。

岡本 純子 コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師

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おかもと じゅんこ / Junko Okamoto

「伝説の家庭教師」と呼ばれるエグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト。株式会社グローコム代表取締役社長。早稲田大学政経学部卒業。英ケンブリッジ大学国際関係学修士。米MIT比較メディア学元客員研究員。日本を代表する大企業や外資系のリーダー、官僚・政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わる。その「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれる。2022年、次世代リーダーのコミュ力養成を目的とした「世界最高の話し方の学校」を開校。その飛躍的な効果が話題を呼び、早くも「行列のできる学校」となっている。

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