子ども手当や保育所拡充では、少子化は止められない
6月から地方自治体で子ども手当の支給が始まった。中学生以下の子ども1人に月1万3000円。2011年度からは、保育所拡充など別の少子化対策も含め上積みが検討されることになった。
そんな折、6月2日には、09年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むとされる子どもの数)が08年と同じ1・37になったと発表された。出生率は05年に過去最低の1・26まで落ち込んだ後、06年から08年まで小幅回復が続いたが、そのトレンドが止まってしまった。リーマンショック後の景気低迷や雇用不安などが影響したためだ。
06~08年の回復も、晩婚化や晩産化が進み、産むのを遅らせていた女性が年齢を意識して出産した一過性の要因が大きいとされる。出生率は決して上向いていないのである。
はたして子ども手当が定着すれば、出生率は回復に向かうのだろうか。あらためて考えてみたい。
崩壊した出会いの仕組み
この点に関して、専門家の間では懐疑的な見方が多い。「少子化対策は総合的に行うべきであって、子ども手当だけでは解決しない」(東京大学の佐藤博樹教授)、「少子化の主因は未婚化なのだから、子ども手当の効果はあまりない」(中央大学の山田昌弘教授)といった具合だ。
少子化の直接的な原因について、第一生命経済研究所の松田茂樹主任研究員は、「7割は未婚化にある。夫婦から生まれる子どもの数は、それほど減っていない」と指摘する。
婚外子の多い欧州などと違い、日本では、結婚する人が減れば、子どもの数も減る。子ども手当は、すでに結婚して子どものいる人に対する政策である。