子ども手当や保育所拡充では、少子化は止められない
東大の佐藤教授は、「男女の出会いの社会構造が崩れてしまったのに、それを知らずに出会いを待っている若者が多い。若者のコミュニケーション能力も落ちているのを感じる。出会いの社会構造が崩れたことを認識したうえで、男女問わず付き合いを広げていくべきだ」と言う。
再挑戦が可能な社会を
こうした社会構造や若者の特性まで政策で変えるのは、難しいだろう。ただ、男女の出会いにも、経済状況が一定程度影響しているのは間違いない。であれば、経済や雇用の部分でとるべき対策はあるはずだ。
日本では、結婚に際し伝統的に女性が男性の収入に頼る傾向が強く、最近は専業主婦志向も強まっているといわれる。女性が結婚相手と考える男性の最低条件は、雇用が安定し高収入という点が多い。現実には、昨今の経済状況もあり、そうした男性は減っている。それが出会いすらあきらめてしまう風潮にもつながっている。
今の若者が結婚・出産を望んだとしても、非正規雇用者同士、あるいはどちらか一方が非正規というカップルになるケースは少なくない。
そう考えると、子ども手当のような経済的援助は結婚・出産へのインセンティブになりうる。しかも、「2人目や3人目の金額を多くしたほうが、少子化対策として効果は大きい」(第一生命経済研究所・松田氏)。出生率が2近くまで回復したフランスでは、子どもが1人よりも2人、2人よりも3人いたほうが、有利になるような政策設計になっている。
また、女性には出産・子育て期間も働き続けたいという人は多い。彼女たちにとって最大の問題は、仕事と出産・子育ての両立である。