なぜ「不完全なリーダー」は意外と強いのか 小林りん氏が語る「協調型リーダーの重要性」

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こばやし・りん●1974年生まれ。高校を中退しカナダに留学、東京大学経済学部卒。外資系投資銀行、ベンチャー企業、国際協力銀行を経て米スタンフォード大学修士号取得。ユニセフ職員としてフィリピンに駐在、ストリートチルドレン教育に携わる。世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダーズ2012」に選出(撮影:風間仁一郎)

8月24日、「社会に変革をもたらすリーダーを育てる」を旗印に、ほかに類のない全寮制インターナショナルスクールが開校する。まったくのゼロからプロジェクトを立ち上げ、6年越しで実現させた若きリーダーの信条は、その辣腕ぶりとは裏腹に「大切なのは自分の能力を上手にあきらめること」だった。

──ISAKならではの特徴は?

定員は1学年50人で今年は1期生のみで開校します。21カ国233人の応募に対し、15カ国から50人を迎え入れます。生徒の構成は日本人30%、日本以外のアジア諸国から50%、残り20%をアジア圏外としています。日本のインターナショナルスクールというと富裕層のイメージですが、私たちは最低でも生徒の2~3割に奨学金を出し支援します。1期生ではその比率が5割超でした。

それから日本のインターナショナルスクールで初めて高等学校の認可を得ました。授業はすべて英語で、国際バカロレア(国際的大学入学資格)取得のカリキュラムを採用、リーダーシッププログラムや、自ら問題を見いだし解決していく力を磨く「デザインシンキング」、放課後の社会貢献活動も重視します。

このデザインシンキングとは、たとえばいすが床をこする音がうるさいなと思ったら、いすの脚にダンボールを張ってみたり、捨てられてたテニスボールを切って張ったりという初級編から、カフェテリアの混雑解消にテーブルの配置を変えようとか配膳ルールを見直そうとか。その先にあるのが、たとえば長野の農業活性化やバングラデシュの村の生活環境改善などソーシャルイノベーションです。要は今何に困ってるのか、ニーズは何なのかを拾い上げ、どう解消するかを考え、試験的に実行してみてフィードバックを得る、この循環なんですね。これは若いうちからトレーニングしていけば、必ず身に付いていくスキルなんです。

──「変革するリーダー」とは?

まず、多様性の中で生きられる人。国籍、社会的・経済的背景、宗教、歴史観など違った要素が渦巻く混沌とした世の中に対応していける人です。20年後の日本には多くの外国人が流入しているでしょう。自分の常識とは異なるバックグラウンドの人々と伍していかなければならなくなるのです。そんな多様性の時代に適応する力を身に付けてほしい。

2番目は問題設定能力です。これからは問題は与えられるのではなく、どこの、何が、問題なのかさえわからない時代になる。たとえば、2011年に全米の小学校に入学した子供の67%は従来存在しなかった職業に就くといわれています。私たちが想像する何十倍もの速さで世の中が変わっていく。新産業が勃興し、転職も単に会社を替えるのではなく職種そのものが変わるような、そんな怒濤の変革期に今の若い人たちは突入していくわけです。自分たちで問題を見いだし、次は何が来るのか察知できなければ、時代のフロントランナーには絶対になれない。

3番目がリスクを取る力です。どんなに多様性を受け入れ、問題設定能力に長けても、変革を起こすためにはたくさんの困難と失敗とリスクが付きまとう。それに挑んでいく人でなければ変革はできません。

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