「心配せんでいい。後は、わしに、任せておけ」

方針に沿った上で失敗した場合には激励

 昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部)

 

松下幸之助の側で仕事をした期間は、23年ほど。27歳から36歳までは、PHP総合研究所で秘書として、その後は70歳まで実質的経営担当者として勤めた。なるほどと感じたのは、秘書の時には、松下から注意されることはあっても、叱責されることはなかったが、経営者になってからは、時に、卒倒するほどの叱責を受けた。いかに峻烈かは、松下幸之助と三洋電機の井植歳男さんに仕えた後藤清一氏の『叱り叱られの記』に書かれている。興味のある方は、探して読まれたらいいと思うが、その叱り方は尋常ではなかった。

新聞をパシャリとたたんで叱責

毎日のように電話がかかってきて、松下のところへ出かけたが、叱責されるときには、呼び出しの電話の、松下の声の調子で、分かった。これは、叱られると思うから、恐る恐る出掛け、部屋に入る。いつもなら、笑顔で迎えて、食事となるが、こういうときは、大抵、両手で、大きく新聞を広げて、顔も見えない。挨拶しても、返事もしない。暫くそのまま立ったままで待っていると、新聞をパシャリとたたんで、叱責が始まる。叱られた内容は、経営に対する考え方から、仕事の内容まで、いろいろあった。記憶では、経営を任されたはじめのころの叱責は10回前後ではなかったかと思う。

とにかく、叱責を受けては、何故に、このように言われるのか、大いに戸惑い、悩むばかりであったが、ある時、ふと気がついた。

松下は、仕事を与える時、同時に、この仕事を進めるに当たっての考え方、基本方針(なんのために、やるのか、なぜ、やるのか)を示した。その考え方、方針に反して失敗すると、激烈な叱責になる、ということである。それでは、考え方、方針に沿って成功すれば、どうかと言えば、勿論、ほめられる。ところが、沿わずに成功する場合もあったが、そういう場合は、評価してくれることはなかった。

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