「人生と経営は賭け事ではない」 株式市況番組を観て、繰り返した言葉

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 昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、きわめて遠い存在になったように思える。
 たとえば米国では カーネギー、ロックフェラーの偉業やその言葉を、今の若手経営者であっても知っている。歴史から学ぶことは短い人生を豊かにするだけでなく、大きな失敗を 避けるための指針にもなる。にもかかわらず、日本では、世代を超えた経営哲学の引き継ぎが、あまりにもできていない。
今回、23年にわたって松下幸之助の側近として仕えた江口克彦氏に連載をお願いした。若いビジネスリーダーには、ぜひ「経営の神様」が江口氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部)

 

早朝から、松下幸之助から呼び出されることもしばしばであった。おはようございますと言いながら、部屋のドアを開けると、松下は、ベッドで横になっている。「やあ、江口君、えらい早く来てもらって、すまんな」と言いながら、ベッドから起き上がり、顔を洗い、そしてベッドの頭の横に置いてあるご先祖様のご位牌にしばし合掌。それから、下村海南という人に教えてもらったという軽い体操をしていた。そして朝食。食べながら、仕事の話が始まる。問われるままに報告する。また、報告すべきことを報告する。

テレビで株式市況番組を観ていた

そうこうしているうちに10時半ごろになる。その時間はテレビで「株式市況」の番組があった。始まると、きまって「きみ、ちょっとこれを観るわ」と言って仕事は中断される。15分ほどだったと記憶しているから、そんなに長い時間ではなかったが、松下がテレビを観ている間、こちらは、株をやるほどの資金も、才覚もないから、まったく興味がない。次の報告、確認の順番を考え、書類を整理している。テレビの「株式市況」には無関心。一瞥だにしない。

やがて、番組が終わると、仕事の再開となる。しかし、その時、ときたまであったが、松下が私に「きみ、わしが、どうして株式市況を観ているかわかるか」ということがあった。最初は、どう答えていいか、大いに戸惑った。まさか、お持ちの株がどうなっているか、値上がりしたのか、値下がりしたのか、確認しているのでしょう、などと、心のなかでは思ったが、それは言えなかった。

「う~ん、わかりません。教えてください」というと、松下は次のように説明してくれた。

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