リーダーは人を動かす前に、自分がまず動く

プロ登山家が語るリーダー論、組織論(下)

2012年に日本人初となるヒマラヤ8000メートル峰14座の完全登頂を達成したプロ登山家の竹内洋岳さん。前回は、目標を持って働く上でも大切な「宣言すること」や「想像すること」について伺いました。今回は環境と能力の問題や、組織と小ユニットで学ぶことの違いについて、話が白熱しました。(対談の前編はこちら

環境の違う場所での経験が自分を鍛える

太田 前回の最後で、環境のお話になりました。能力をいかにその環境で発揮するかという話です。

竹内 環境と能力に関しては、2つの考え方があると思います。

まずひとつ目。知り合いの生物学者から聞いた話を引用しながらお話しますが、生き物の進化について、「キリンが高いところのものを食べようと首を伸ばしていたら、生まれてきた子どものキリンの首が少し長くなって、さらに子どものキリンはまた少し長くなって……」というのは嘘。進化はトライ&エラーの繰り返しによって起こるものです。

キリンであれば、少し首が長い突然変異がなぜか生まれて、そのキリンが環境に適応して生き延びて子どもを増やすことでキリンという種全体の首が長くなる。トライ&エラーが繰り返された中で環境に合ったものが生き延びたと。生き物は、種全体でトライ&エラーを繰り返しているんですね。

そこで、「突然変異」ということを考えてみると、人間ほど個体差がある動物はいない。人間の一人一人が突然変異だと考えると非常にわかりやすいのではないかと。とすれば、人によって適した環境が違って当然です。

太田 私という突然変異が生かされる場所がどこかにある……と。

竹内 そう、どこかにあるわけです。たまたま最初から自分の能力に合った環境にいる人もいるでしょうし、自分でその環境を見つける人、誰かにそこへ放り込まれる人、発揮されないまま終わる人もいるでしょう。ただ、どこかに自分の能力に適した環境があるはずです。

もうひとつは、生き物はその環境の中で生き延びようともがきます。もがいたときに、その潜在能力が発揮される。高度8000メートルの環境に立ち入っていく生き物ってアネハヅルとインドガンと人間だけなんです。自ら踏み込んで、低酸素という厳しい環境に適応するために潜在能力を発揮した。

「自分の持っている潜在能力に合う環境を探す」のか、「環境に飛び込んでいったときに、もがいて自分の潜在能力を発揮する」のか。

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