リーダーは人を動かす前に、自分がまず動く プロ登山家が語るリーダー論、組織論(下)

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登山の世界に「男だから」「女だから」はない

 
竹内洋岳(たけうち・ひろたか) 1971年生まれ。プロ登山家。立正大学客員教授。ICI石井スポーツ所属。幼い頃から登山を始め、立正大学山岳部で国内登山を重ねる。1996年にエベレスト登頂。大学卒業後は会社員として働きながら登山活動を続ける。2006年、記者会見で8000メートル峰14座に登る「14プロジェクト」発足と「プロ登山家」として活動することを発表。2012年に日本人初となる8000メートル峰14座の完全登頂を達成。2012年に植村直己冒険賞、2013年に文部科学大臣顕彰、スポーツ功労者顕彰を受賞。公式ブログはこちら

太田 どちらにしても、自分から環境を見つけに行くということが不可欠ですね。私は仕事が面白くて仕方ありませんが、仕事でスキルアップしていくときについて考えてみると、「新しい環境やアウェイの場での経験」が成長の階段を昇らせてくれたと思っています。いかに異質な経験をたくさんできるか。あえて難所に自分から行くこともあれば、上司から「やってみなさい」と言われてやることもあるけれど、あとから考えてみると、環境の違う場所での経験が自分を鍛えるということがよくわかります。

現在、安倍首相は女性の活躍促進を図る政策を進めていると言われ、女性の社会進出や男女差の問題がよく話題となります。登山の現場で、男女の差を感じることはありますか?

竹内 人数的にはやはり男性の方が多いです。ただ、当然のように女性もいます。トイレの問題といったハンデはあるかもしれませんが、女性が登山をしたいと思ったときに排他的な意識を感じるということは少ないのではないかと。

太田 同じスポーツでも、入りづらいスポーツとそうではないスポーツがあるように思います。登山が女性に対して排他的でない理由は何でしょうか。

竹内 登山はそもそも、男女で分かれていませんからね。ほとんどのスポーツは男子リーグ、女子リーグが分かれていますが登山はそうではない。男性よりも強い女性もいますからね。私がずっと一緒に登ってきたガリンダは女性ですが、「女だから」と考えたことはないように思います。ガリンダも私のことを「男だから」とは思っていないと思う。性別ではなく、個人。「ガリンダだから」「ヒロ(竹内さんの愛称)だから」というふうに考えている。

同じように、「日本人だから」「オーストリア人だから」というのもありません。それは山という厳しい環境がそうさせるのだと思います。そういうことを言っている環境ではないですから。

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