リーダーは人を動かす前に、自分がまず動く プロ登山家が語るリーダー論、組織論(下)

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小ユニットで求められる「専門性」は組織登山で学んだ

太田 竹内さんは学生時代に組織登山を経験され、現在は小ユニットでの登山をされています。ビジネスの世界では近年、大きなチームより少人数のチームの方が同じ予算でも成果を出しているという例があり、小ユニットの効率性が注目されつつあります。竹内さんは組織登山から小ユニットに移行したとき、どんな変化を感じましたか?

竹内 ガリンダ、ラルフと3人で登山をしているときは誰もがリーダーになるんです。登山のリーダーは文字通りリードをする人であり、一番先頭に立って行動をする人。リーダー論では「人を動かす人がリーダー」「うまく人を動かせる人が優れたリーダー」と言われることがありますが、私は自分がまず行動してみせるのがリーダーだと思います。

私たち3人はそれぞれ、ラルフは岩登り、ガリンダは氷のセクション、私は状態の悪いセクションを登るのが得意でした。だからそれぞれの得意分野に来たときは、得意な人がリーダーをする。リーダーが常に入れ替わるという効率的な登山でした。

太田 とはいえ、信頼関係がないとうまくいかないのではないでしょうか。国籍も性別も文化も違う3人が、どのように信頼関係を築いたのでしょう?

竹内 これはとてもシンプル。同じ目標を持っていれば信頼できます。山登りは非常に単純で、ここにあるテーブルの半分もないようなスペースである山の頂上に登って降りてくるというもの。それが共通の目標です。山に登ろうと思った時点で、私たちは充分信頼し合えます。

それから、道具をどう扱っているかというのを見たときに、信頼できるかどうかがわかります。たとえば、ロープを「はい」と渡したとき、どう受け取るか。そういったことで、その人の経験や経歴、信頼できるかがわかる。

太田 技術を見て信頼する……

竹内 はい。もちろん人柄とかもありますけれど、それ以前に技術。信頼できるかどうかは技術を信頼できるかどうかが第一だと思います。それから、小ユニット登山もいいですが、私が以前行っていた組織登山もとても良かったですよ。なぜなら、先輩が教えてくれるからです。先輩と後輩という関係が非常に個人を鍛えてくれる。少人数のチームだと……

太田 専門性が確立しているというのが前提になります。全員がプロフェッショナル。

竹内 そうです、そうです。小ユニットは信頼できる人同士が集まっているところなので、専門性がないと入っていけない。

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