太田 人の育成と似ていますね。まずは組織で、与えられた環境の中で自分はどうパフォーマンスを発揮していくかということを学び、そこで専門性が磨かれたら、今度はその強みが発揮できる場を探していく。
竹内 私も、組織登山での経験をラルフが評価してくれました。もし組織登山で登山をしていなければ、ラルフは私の専門性というものは見抜かなかった。お互いにそうでしょう。だから組織登山も小ユニットでの経験も、どちらが良いということではなく、どちらの経験も等しく重要でした。
ゴールを目指すのでなく、どこまでやれるか試し続ける
太田 プロ登山家になり、自ら掲げた14座という目標をみごと達成されて、この先のライフワークについてどうお考えなのかお聞きしたいです。どういう世界観をお持ちなのでしょうか。
竹内 14座を登って2年になり、自分でも振り返る余裕がでてきました。14座を登ったことがどういうことなのかを考えてみると、私は「経験の積み重ね」という言葉がしっくりきません。14座は全て違う山で、前回の経験が何の役にも立たない。経験というのは積み重ねではなくて、「並べるもの」という感覚があります。
14座を登ったことが新聞や雑誌でも取り上げられましたが、裏を返せば地球上にある無数の山のうち、たった14にしか登っていない。これまでもどこまで死なないで行けるか試した結果、14座になったのだから、これからもプロ登山家としてどこまで行けるかというのを試したい。登りたい山は無数にあり、可能性はたくさんあります。最終ゴールを決めるのではなく、「どこまで続けていけるのか」を考えたいですね。
すでに40歳を超えていますから、スポーツとして考えたなら引退する年齢です。体力の衰えに合わせて登山の方法を変える必要がある。また、登れなくなったときに、どうやって登山の世界に関わることができるかというのも一つの課題だと思っています。
(構成:小川たまか・プレスラボ/撮影:名鹿祥史)
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