日本の治水対策がこのほど大きく変わったのをご存じだろうか。今年5月「流域治水関連法」が公布され、7月にその一部が施行された。改正の背景には、豪雨災害、土砂災害が激甚化・頻発化していること、さらに気候変動の影響により今後、降雨量や洪水発生頻度が増加することが見込まれていることがある。
「流域」とは降った雨が一筋の川の流れとして収斂するエリア。一級河川で考えると日本には109の流域がある。従来は、主に河川管理者が、「河川区域」において、堤防やダムなどを整備し治水を行っていた。
が、改正後はこれに加え、流域に関わるあらゆる関係者が協働し、山間部など上流部の集水域から、平野部で洪水に見舞われることの多い氾濫域まで、流域全体を視野に入れて治水に取り組むことになったのだ。
森林が山崩れや洪水を防ぐことへの期待
流域における治水を考える上で、重要なのが森林の存在だ。林野庁によると、森林は国土面積の67%を占める。内閣府による世論調査では対象者の約半数が森林に「山崩れや洪水などの災害を防止する働き」を期待しており、多くの人が森林は下流における災害を食い止める役割を果たしている、と考えている。
ところが、その森林の存在を脅かしているのが林業である。戦後木材自給率は輸入材に押されて低下し、2002年には18.8%と最低を記録したが、この事態を打開するため、国は林業の成長産業化を推進。国産材を安定的に供給するために、これまで不明だった森林境界や所有者を明確にしたり、高性能林業機械の導入や林業作業道の整備などを進めている。
需要を促進する手も打った。住宅用以外に公共建築物、強度・断熱性・耐震性を高める加工をしたうえでのマンション建材、バイオマスエネルギー用材としての活用を促進。その結果、2019年の木材自給率は37.8%と、2011年から9年連続で上昇している。
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