実際、こうした林業の取り組みが、洪水や土砂災害につながる可能性を示唆した調査も出ている。9月15日に自伐型林業推進協会が発表した「災害と林業〜土石流被害と林業の関係性の調査報告」がそれだ。
「2011年、台風12号の影響で紀伊半島では、一部地域で雨量が2000ミリを越えるなど記録的な豪雨に見舞われました。このとき雨量が同じでも、林業の施業方法によって、崩れている森林とそうでない森林がありました」と、自伐型林業推進協会の中嶋健造理事長は調査のきっかけについて語る。
林業には2つの方法がある
「林業の施業方法」は、「短伐期皆伐」と「長伐期多間伐」の主に2つある。短伐期皆伐施業とは、一般的に「木は植えてから50年で切る」と決め、広範囲を一斉に伐採。禿山になった後、再造林(植林)を行う。
伐採や運び出しを効率的に行うため、例えば20トン級のバックフォーや10トン級のトラックなど、大型機器を利用する。こうした機器を森林に入れるため、作業道の幅も4メートル以上と広くなるのが特徴だ。
一方、長伐期多間伐施業は、所有・管理する山林を約10年に1度の頻度で、2割程度の間伐(密になった林地の木を切ること)を繰り返す。残った木が高品質の木に成長する。小型機械を使用するため、作業道の幅は2メートル〜2.5メートル程度だ。
今回、自伐型林業推進協会が重点調査した土砂災害現場は以下のとおりだ。
2017年7月九州北部豪雨災害(福岡県朝倉市)
2018年7月西日本豪雨災害(岡山県西粟倉村)
2019年台風19号災害(宮城県丸森町)
2020年7月豪雨災害(熊本県球磨川流域)
これらの多くの場所で、皆伐地や林道作業道を起点とした、崩壊が発生。2019年台風19号災害(宮城県丸森町)と、2020年7月豪雨災害(熊本県球磨川流域)については、衛生画像、ドローンなどを活用しながら詳細な調査を行った。
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