無謀な森林伐採が「土砂災害」を招いている事実 林業が山間部の災害に与える小さくない影響

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2019年に関東、甲信、東北地方に甚大な被害をもたらした台風19号では、丸森町で10人死亡、1人行方不明と、自治体単位では全国で最多の犠牲者を出した。

一般的に土砂災害の原因は、雨量、地形・地質、土地利用にあるとされる。台風19号が襲った2019年10月12日から13日の総雨量は700ミリを超え、丸森町内の阿武隈川本流と支流が氾濫。このため「想定外の雨が原因」と報道された。だが、地形や地質も見逃せない。丸森町は傾斜が急で、斜面崩壊が起こりやすい。また、崩れやすい真砂土(花崗岩が風化したもの)のエリアも広がる。

崩壊の起点は林業作業道

一方、これまであまり言及されていなかったのが林業である。自伐型林業推進協会は丸森町で崩壊の多かった廻倉地区を調査した。

(出所)自伐型林業推進協会調査

54の崩壊箇所のうち、皆伐地が35件(65%)、作業道起因の崩壊が16件(30%)、林道・公道起因の崩壊が2件(4%)と、林業施業が起因となった崩壊が98%を占めた。放置人工林や未整備林の自然崩壊は1件(2%)。これまで災害時に崩れるのは手入れをされていない人工林が多いと言われていたが、今回の調査では1件だった。

2021年12月、筆者は中嶋氏とともに丸森町廻倉地区に行った。崩壊場所の1つは、11世帯39人が暮らした集落だった。3人の命が失われ、1人が行方不明となった場所だ。

丸森町廻倉地区の崩壊現場(著者撮影)

崩壊の起点は林業作業道だった。崩れ始めた場所の幅は2メートル程度だったが、土砂が斜面を流れるうちに、崩れやすい真砂土を巻き込み巨大な土石流となったようだ。真砂土は水分を含まない時はさらさらとしているが、水分を含むとべとべとの泥になり、がっちり固まって斜面を削りながら流れてくる。

崩壊地のなかに植林されたエリアもあった。2002年に大規模な山火事が発生。火事後に植林されたが、スギはまだ樹齢が若く、土地を安定させるには至っていなかったと考えられる。

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