働かないオジサンが「ヒラを生きる」極意 「自ら役職を降りる」選択は正しいのか

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名刺に書いてある役割以外ではどうか? と聞くと、カフェ、民宿などをしながら、半農・半自給がしたいそうだ。ただ、家族の扶養などを考えると簡単には決断できないことはわかっているという。どうも半農・半自給も、こがれの域を出ていないように見受けられた。

引き続き話をしていると、T氏と私とに、ある共通点があることに気がついた。本多信一さんという人に相談に行っていたことだった。

本多信一さんは、1971年に現代職業研究所を設立したコンサルタントで、職業選択や仕事に関する多くの著作を持つ。私は、自分の今後の進み方について相談した。一方、T氏は、本多さんが執筆した『内向型人間だからうまくいく』『「内気」だから成功できる!』(ともにPHP研究所)などの、「内向的な人」「内気な人」に向けた本に興味をもって、相談に行ったそうだ。本多さんの本は、必ず購入したという。また「内向的」「内気な」というフレーズのある本が出版されれば、今でも必ず書店で目を通すそうだ。

「やりたいこと」を探すコツ

本多さんの話をしているときに、T氏の表情がイキイキしていた。そこで私は、本多さんに関心を持ったことから考えてはどうかと提案した。具体的なキーワードは、「内向的」「内気」なサラリーマンである。

「何をしたいか」を考えるときに、自分が「なぜかこだわってきた」ことから探すのは、ひとつの手である。「自分の適職は何か?」「何が好きか」と、答えを自分の外に求めるよりも、自分がこだわってきたことを振り返ったほうが、うまくいくことが多い

そして、そのこだわりは、好きなことというより、むしろ悩みや挫折的なことのほうが良い。悩みや挫折を、次のステップに向かうきっかけにした人は少なくないからだ。

わざわざ連絡を取って、本多さんや私に相談に来ることを考えても、T氏自身がそれほど内向的だとは思われない。それでも「内向的」「内気」ということにこだわってきたのであれば、そこに何らかのヒントが隠されていると思うのである。

T氏は、私の話を聞きながら少し考え込んでいた。

読者の方がT氏にアドバイスするとすれば、どのように語りますか?
① T氏の「自分から降りる」という考えについてはどう思いますか?
② T氏から「これからどうすればいいだろうか」と聞かれたら、あなたはどのようにアドバイスしますか?
twitterでご意見を募集します。ハッシュタグ「#働かないオジサン」をつけて、呟いてください。皆さんの意見を聞いたうえで、またこの問題に戻って考えてみたいと思っています。
楠木 新 人事コンサルタント

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くすのき あらた / Arata Kusunoki

1954年神戸市生まれ。1979年京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係を中心に経営企画、支社長等を経験。47歳のときにうつ状態になり休職と復職を繰り返したことを契機に、50歳から勤務と並行して「働く意味」をテーマに取材・執筆・講演に取り組む。2015年に定年退職した後も精力的に活動を続けている。2018年から4年間、神戸松蔭女子学院大学教授を務めた。現在、楠木ライフ&キャリア研究所代表。著書に、『人事部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)、『定年後の居場所』(朝日新書)、『定年後』『定年準備』『転身力』(共に中公新書)など多数。

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