育休を取った理由は「せっかく生んだので、できるだけ長く、より身近に観察したかったからです。観察の醍醐味は、子どもの成長の過程を見られることだという。“成長”でなく“その過程”であることに注目したい。「たとえば立った瞬間だけでなく、何度も失敗してもめげないところまで見られるのが楽しい」。
その後、夫婦で相談し、長男は幼稚園に行くことになった。当時、通っていた保育園は園庭が狭く、お散歩コースにも問題があった。
「活発に動き回る長男が育つのに十分な環境と言えない状況にありました。一方で幼稚園の充実した環境に引かれました」
幸い、第2子、第3子の産休・育休を使って、幼稚園の送迎は妻がしばらくの間、できた。
その後、共働きは厳しいと夫婦で判断し、宮本さんが家庭に入ることになった。理由は「子どもの成長していく様子をより身近に見たかったから」。共働きから片働きに変わった理由も、夫のほうが家庭に入った理由も、「仕事」や「キャリア」ではなく「子ども」由来であるのが特徴だ。
共働きから片働きへ、保育園から幼稚園へ、という変化を見て、宮本さんの育児観は伝統的なものと思う人がいたら、それは大きな間違いだ。本連載を始めた動機のひとつである「産後クライシス」について聞くと、思いがけない答えが返ってきた。
「日本の大多数は産後クライシスみたいな感じだと思うのですが……」と水を向けると「え! そうなんですか!」と驚かれた。それは、宮本さんが育児にコミットしているからではないでしょうか……と尋ねる必要もなく、こんな説明が続いた。
「僕は主夫歴3年以上ですが、幼稚園でもお父さんの送りが増えています。今年10歳になる長男が保育園に通っていたおよそ8年前から、送迎にお父さんが増えてきた感じがありました。だから、産後クライシスがそんなに多いとは思えないんですよね……」
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