最終的に決めるのは、社会でも経済でもない
では女性の社会進出が進み、既存のジェンダー規範が緩み、男性にも「家庭に入る」選択肢ができたら、どうか。主夫と大黒柱の妻というカップルは、男女共同参画の究極的なロールモデルなのか。「うーん。やっぱり皆にお勧めできるとは思えません。僕は好きでやっているから納得できますが……」とシビアだ。
どんな夫婦関係を築くか。仕事はどうするか、子どもはどうするか。少子化対策や経済政策の観点から、女性の就労や育児支援を語ることの多い昨今。論理的な帰結と家族の幸せ、その個別性や多様性を考え抜いた宮本さんの言葉には説得力がある。
どんな家族にしたいのか、最終的に決めるのは、社会や経済ではなく自分だ。自分たちにとって大事なことは何か。最優先は何か。後回しにしてもいいと思えるものは何なのか。宮本さんが家族や仕事を流行のキーワードをいっさい使わず話したのは、夫婦でこの点について話し合い、価値観が一致し、自分の責任で決定しているからではないか。
ほかの夫婦へのアドバイスはありますか、と聞くと、しばらく考えた後「みんなもう、十分に頑張っているから、これ以上頑張らなくてもいいんじゃないでしょうか」と言う。そして子育てについては「育児経験があるとマルチタスクができるようになる、とか言われますが、ビジネスに役に立つとか立たないではなく、目の前にいる自分の子どもとかかわる楽しさを味わったらいいかもしれません」。
ご夫婦に、結婚や家族がいていいなと思うのはどんなときですか、と尋ねてみると「家に帰ったら誰かがいるとき」「子どもたちが成長しているのを見たとき」。そして結婚の意義は「本音で話せる相手が絶対にひとりは世の中にいると信じられる」こと、という答えだった。
権利とかジェンダーとか役割とか経済合理性を持ち出して、自分たちのありようを肯定する必要がない。シンプルな言葉で足りるのは、たぶん2人が持つ価値観が明確で、それに合った幸せをつかんでいるからだ。
(撮影:今井康一)
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