「病院看護師」バブルがやってくる! 11年後に14万人、だぶつきの衝撃
実際、看護師不足は深刻だ。看護師(准看護師を含む)の数は約144万人(12年)と、9年間で25万人近く増えた。それでも、厚生労働省の「看護職員需給見通し」によれば、15年時点で看護職員(看護師、准看護師、保健師などの総称)の「需要」が約150万1千人なのに対し「供給」は約148万6千人と約1万5千人不足している。アンケートの「看護学部・学科」の新設理由を見ても、
「社会環境の変化と地域における看護師の人材需要に対応」(北海道科学大学)
「地元千葉県をはじめとする社会に貢献」(聖徳大学)
などと、いずれも不足する看護師への対応を挙げている。
それにしてもなぜ、大学の数が飽和状態といわれる中、「看護系新設ラッシュ」が起きるのか。
「一言でいうと、看護師不足と大学の学生募集の利害が一致した結果」
と、教育ジャーナリストの小林哲夫さん。受験生確保に悩む大学にすれば、適当な学部をつくっても受験生が集まらない。また集まっても、就職先がなければいずれ定員割れというリスクに悩むことになる。その点、看護系であれば受験生は集まり就職先にも困らない。大学にとって看護系学科は、学生を確実に集められる「おいしい市場」(関係者)となったのだ。
診療報酬改定の余波
しかし、安易な新設はリスクを伴う。
典型例が04年度に誕生した法科大学院だ。少子化に悩む大学には学生集めの切り札と映り、74校が「乱立」した。だが、司法試験合格率は平均20%台に低迷。学生離れが加速し、募集停止が相次いだ。今年度の入試では67校が学生を募集したが、61校が定員割れし、うち44校は半数にも満たなかった。こうしたことから先の小林さんは、
「本来、看護師の国家試験の合格率は100%に近いが、すでに一部の大学では合格率が60%、70%台のところも出ている。今後、合格実績の低い大学は、法科大学院のように定員割れを起こし募集停止になりかねない」
と「新設ラッシュ」に懸念を示す。
そして気になるのが、増え続ける看護師の数だ。
病院で勤務する看護師14万人が余る──。そんなセンセーショナルな試算を、医療コンサルティングの「グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン」(東京都港区)が行った。同社の渡辺幸子社長は言う。
「国が描く改革のシナリオをベースに試算した結果です」