【産業天気図・パルプ・紙】原燃料価格が騰勢強め利益圧迫、終始「曇り」止まりか
業界各社の幹部に「過去に経験のない異常な水準」と言わしめる高騰ぶりだ。原油や薬品なども上昇しており、原燃料価格による減益要因は業界大手の王子製紙で158億円、日本製紙グループ本社で166億円とはじく。
こうした中、業界として顕著な動きを見せるのが輸出への傾斜だ。出荷に占める輸出の割合は直近の4月実績で5%弱。印刷・情報用紙に限定しても10%強にすぎないのだが、かつて国際競争とは無縁に近かったことを考えれば様変わりともいえる。4月の紙・板紙の輸出量は、前年同月比で紙が3倍、板紙も2倍増となっており、絶対量は小さくとも伸び率は高い。中国、韓国などアジアと豪州向けが中心だが、輸出量は3月、4月と2カ月連続で過去最高を更新している。
もっとも、各社は輸出で利益を稼ごうとしているわけではない。不運にも国内需要の前年割れと前後して稼働を始めた新マシンの稼働率を少しでも上げたいためだ。「限界利益が1円でも取れれば輸出を拡大していく」とはある製紙会社の幹部。“背に腹は変えられぬ”で始まった輸出戦略に、幸いにも追い風が吹いている。
中国需要でアジア市場の需給がしまっているところに、原料パルプ高を転嫁するため中国などの大手製紙が打ち出した値上げが浸透し始めたのだ。北越紀州製紙では値上げによる業績影響を、輸出の場合は24億円の増益要因と読んでいる。ただ、同じ値上げが国内向けには30億円の減益要因として作用するといい、利益貢献度は乏しい。業界上空の曇天は、海外に太い活路が見出せるまで居座り続けそうだ。
(山本 隆行=東洋経済オンライン)
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