【産業天気図・パルプ・紙】原燃料価格が騰勢強め利益圧迫、終始「曇り」止まりか

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10年4月~9月 10年10月~11年3月

 パルプ・紙業界は2011年3月まで、終始「曇り」にとどまりそうだ。「会社四季報」(夏号)の予想によると、業界全体の11年3月期の営業利益は、前期比6.2%減と低調な見通し。原燃料価格の上昇が回復の重荷となっている。

紙・板紙の09年度の国内出荷量は前年度比6.9%減の2596万8000t。前年割れは2年連続で、2600万tを下回るのは1988年度以来21年ぶりである。

企業の広告費削減など企業活動の停滞や、新聞広告不振によるページ数削減などが要因だが、米アップルのiPad(アイパッド)の登場に象徴されるように産業構造の変化も一因しているとの声もある。日本製紙連合会の芳賀義雄・前会長(日本製紙グループ本社社長)は「10年度は若干プラスに動くと期待したい」と話すが、展望は決して楽観視できない。

4月の国内出荷量は前年同期比2.7%増。紙は5カ月連続、板紙は6カ月連続のプラスで確かに足元の需要は着実に回復に向かっている。ただし、出荷増を牽引しているのは板紙であって、物流など産業活動が回復すればそれに連動するのは当然だ。問題は紙の最大のボリュームゾーンである印刷・情報用紙。こちらは輸入紙の増加もあって5カ月ぶり反落と一進一退が続く。

需要が緩んでいる中、値上げは至難だ。売上高はせいぜい横ばいか、微増が精一杯となりそうだ。そのため、今期売上高が拡大する企業は例外なく企業買収によるものか新規連結によるもの。一方で、原材料価格は再び騰勢を強めている。特に気がかりなのがパルプの国際価格。2月下旬に起きたチリ大地震の影響で現地の生産障害が長期化し、世界的な不足感から1t1000ドルに迫っている。

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