「緊急事態」では「人と兵站」が決定的に重要な理由

軍事と感染症危機に不可欠な「有事の国家戦略」

感染症対策は国家が「総力戦」で対応するべきだが、収束の気配は見えない……(写真:Ryuji/PIXTA)
新型コロナ危機を「有事」と捉えつつ、こうした感染症危機に際しては、国家が「総力戦」で対応するべきという理論を提示した書『感染症の国家戦略 日本の安全保障と危機管理』(阿部圭史著)が、このたび上梓された。
大震災と原発事故という未曽有の大災害に自衛隊は約10万人を動員し、米軍も最大時1万6000人、艦艇約15隻、航空機140機が参加した2011年の東日本大震災。平常の災害出動とは全く異なる「有事」ともいうべき際に、当時、防衛省統合幕僚監部の防衛計画部長の職にあり、日米両政府・軍の連携調整にあたった磯部晃一氏が、「有事」に対応するための「国家戦略」を解き明かす。

国家戦略を欠いていた戦後の日本

「国家戦略」とは取り扱いに難儀なものである。これを国民受けする簡単なワン・フレーズに落とし込み、勇ましく振りかざし始めれば、国の将来を誤るおそれがある。

『感染症の国家戦略 日本の安全保障と危機管理』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

しかし、「国家戦略」は国家の向かうべき方向を示すもので、国家としてなくてはならないものである。周辺地域の情勢や世界のトレンドを冷静かつ客観的に見つめ、自らの立ち位置を明らかにし、現実に即した国家の利益を見極めて、国家を経営していかねばならないからである。ここには、透徹したリアリズムと同時に、国民国家としてのイデアリズムも加わってくるので慎重な取り扱いが必要である。

戦後の日本においては、「国家戦略」を声高に主張することはあまりなかったし、政府も主導的に「国家戦略」を規定してこなかった。

戦後復興期の日本は、「国家戦略」などという大それたことを考える余裕もなく、今を生きるのに精一杯であったのが実態ではなかったか。高度経済成長を謳歌していた時代は、経済発展を第一義に考えて、安全保障面ではアメリカの庇護のもとに、最後はアメリカに助けを求めればよいではないか、といった風潮があったであろう。

次ページ戦後の日本は敗戦による廃墟から立ち上がる際
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • ソロモンの時代―結婚しない人々の実像―
  • 非学歴エリートの熱血キャリア相談
  • コロナ後を生き抜く
  • 最強組織のつくり方
トレンドライブラリーAD
人気の動画
早慶上理・MARCH・関関同立、少子化でどうなる?
早慶上理・MARCH・関関同立、少子化でどうなる?
日本製鉄は「巨人トヨタ」でも1ミリも譲らない
日本製鉄は「巨人トヨタ」でも1ミリも譲らない
山手線2日間運休「渋谷駅大工事」何をどう変えた
山手線2日間運休「渋谷駅大工事」何をどう変えた
「ニッポン半導体」敗北の真相
「ニッポン半導体」敗北の真相
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
勝ち組シニアと負け組シニア<br>定年格差

「45歳定年」発言に対し一部で猛反発。現実には法改正で70歳までの雇用確保が今春努力義務化されました。人生100年時代といわれる今、従来の定年はもはやなくなりつつあります。老後も働くシニアが第二の人生を勝ち抜くためにすべきことは何でしょうか。

東洋経済education×ICT