次に、パンデミックの常として、数次にわたって感染の波が襲う長い戦いとなることに対して如何に備えるかである。第1波が収束すればそれで任務終了とはならない。次の波に備えて、第1波の対応を迅速に検証して、対策を講じていくことが重要である。キャンペーン・プランは、一度策定して終わりではなく、つねに検証され見直しを継続して作戦を成功に導くものである。
パンデミック対応全般の補佐体制
先に尾身会長と折木元統幕長を、専門家による補佐の例として挙げたが、お二人には決定的な違いがある。軍事専門家たる統幕長には、人事、情報、作戦、兵站、指揮通信、法務等の機能別の幕僚が補佐する体制が整っている。したがって、実行の可能性の観点も含めて総合的に意見を述べることが可能である。
軍事作戦を遂行する上でも、感染症対策を遂行する上でも、作戦を成り立たせるのは人であり兵站である。昨年5月、アメリカでは当時のトランプ大統領が「ワープ・スピード作戦」と名付けた、ワクチン開発の官民によるプロジェクトを立ち上げた。21年1月までに3億人分のワクチン開発を目指す画期的かつ野心的なプロジェクトであった。
この際、私が注目したのは、その責任者2人の人選であった。1人はまさにワクチン開発の専門家である大手製薬会社の役員がチーフ・アドバイザーとして就き、もう1人はロジスティクスの専門家である陸軍資材コマンド司令官の現役陸軍大将が最高執行責任者(COO)として就いた。ここでは、ワクチン開発が製薬会社のみで完結するものではなく、供給網も含めロジスティクスの重要性を如実に物語っていた。
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