この政治が優先するというシビリアン・コントロールの原則は、実際の有事でも、パンデミックでも最も重要な肝となる。振り返ってみると、果たしてこれがどうであったのか。私は感染症の専門家ではないが、自衛隊の大部隊の運用や日米共同に携わった経験から見ると、2つの課題が浮かび上がってくる。1つは、このパンデミック対応にキャンペーン・プランはあるのか、という点、もう1つは、パンデミック全体を補佐できる体制はとれているのか、という点である。
「キャンペーン・プラン(全般作戦計画)」の必要性
キャンペーン・プランとは、何か商品などの売り出しの計画を指すのではなく、軍事作戦としての全般作戦計画を指している。そこでは、軍事的な観点で幾通りものシナリオを分析して、まずワーストケースに如何に備えるか、ということを考える。
パンデミック対応に適用するなら、医療崩壊に至る状況や新型コロナウイルスが市中に蔓延し制御不能に陥る状況がワーストケースに該当するであろう。それを如何に抑え込むか、そして万が一、そうなった場合に国として如何に対応するのかをベースにして対策を講じていくことがカギとなる。
そのためには、ワーストケースを見据えて重症者用の病床を如何に確保していくかの計画がまず必要である。2番目の制御不能に陥るワーストケースに対しては、全国知事会の提言にもあるように、「更に強い措置となるロックダウンのような手法のあり方についても検討すること」も含めて人流を徹底的に抑制することが必要になる。こうした法的な問題に関しては、細谷雄一慶応義塾大学教授が「『非軍事』の非常事態対処の法制がないこと」が課題であるとブログで指摘している。“備えあれば患いなし”の態勢を整備することが必要である。
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