「緊急事態」では「人と兵站」が決定的に重要な理由 軍事と感染症危機に不可欠な「有事の国家戦略」

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このように、パンデミック対応は感染症に特化した対策に限らず、感染症対策を講じながらワクチンの開発やパンデミックの影響を最小限に抑えていくオペレーションである。感染症という極めて特異な有事であるが、感染症対策はもとより、ロジスティクスや人的資源の有効活用など総合的な視点で政治を支える体制を整備して、多くの知見を活用して対応することが肝要である。

阿部圭史氏との出会い

今年1月、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)の紹介により、阿部圭史氏に初めてお目にかかった。コロナ禍の中、翌日にはジュネーブの世界保健機関(WHO)に復帰するという。一体、私に何かお手伝いできることなどあるのだろうか、と思った。

しかし、『感染症の国家戦略』の元原稿を読ませていただき、そして、阿部氏の感染症の危機管理に対する問題認識や熱意を直接うかがい、“これは世に出すべきだ”とお勧めした。すでに本稿で述べたとおり、有事という軍事的な発想・知見を踏まえた上で感染症対策のキャンペーン・プランを確立する必要があると考えていたからだ。そして、阿部氏のように感染症対策の専門家であると同時に軍事作戦に通底するロジスティクスや人材育成の重要性を理解し、運用できる人材が日本にはもっと必要だと思ったからである。

本書が医療・政府関係者はもとより、多くの方々に読まれることを期待してやまない。

磯部 晃一 第37代東部方面総監、元陸将

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いそべ こういち / Kouichi Isobe

前ハーバード大学アジアセンター上席研究員。1980年防衛大学校(国際関係論専攻)卒、陸上自衛隊に入隊。第9飛行隊長、陸上幕僚監部防衛課長、統合幕僚監部防衛計画部長、第7師団長、統合幕僚副長などを歴任、2015年東部方面総監を最後に退官。アメリカ海兵隊大学およびアメリカ国防大学にて修士号を取得。現在、防衛省の統合幕僚学校および教育訓練研究本部の部外招聘講師として統合運用や戦略を講義。安全保障や危機管理等に関する講演やアメリカ研究機関との研究交流に従事。単著として、猪木正道特別賞受賞の『トモダチ作戦の最前線:福島原発事故に見る日米同盟連携の教訓』(彩流社、2019年)がある。

 

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