「太陽光発電2030年新築戸建て6割」が意味する事 住宅用太陽光発電をめぐる現状と今後を解説
年間新規導入件数の回復が再び増加したのは2018年度からだが、これはZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)をはじめとする省エネルギー性の高い住宅供給を国が強化し始めたことが要因と考えられる。
なお、ZEHについてざっくり説明すると、断熱性が高い建物に加え、太陽光発電などの創エネ機器、LED照明や高効率エアコンなどの省エネ機器などにより、エネルギー消費と創エネルギーの差し引きがおおむねゼロになる住宅のことを言う。
国は、「2020年までに注文戸建て住宅の半数以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」という目標を打ち出し、普及を努めている。現状では目標達成は厳しい状況だが、目指すべきスタイルの1つであることは間違いない。
話を戻すと、FIT以外に太陽光発電の普及を後押しする制度やサービスが充実したのも、導入の状況が回復した要因となっている。それは、2016年4月から開始された「電力の小売全面自由化」(電力自由化)を背景とする。
後押しする制度やサービスとはどんな内容なのか
これにより、全国に9社ある大手電力会社だけでなく、ガスや住宅関連などさまざまな事業者が電気の小売市場に参入。それに伴い、FITの固定買い取り額より割高で住宅用太陽光発電の電力を購入する事業者が登場するなどの動きが起こっている。
小売り事業に参入した事業者の中には、顧客サービスの充実やESG経営の強化を狙う大手ハウスメーカーなども参入しており、こうしたことも太陽光発電の普及に貢献していると見られる。
太陽光発電の設置費用をゼロとするサービスも登場している。設置費用をサービス提供する事業者が負担し、発電電力を住宅所有者から一定期間買い取り、メンテナンスや故障の際の対応も事業者が行うというものだ。
契約期間終了後には設備、発電による利益は所有者のものとなる。つまり、所有者は屋根を事業者に貸すわけだ。東京都では2021年度からこのサービスの普及に対し助成金制度を開始している。
より高い省エネ効果を狙うサービスも始まっている。具体的には、ガス事業者の中には家庭用燃料電池「エネファーム」の設置と太陽光発電の発電電力を購入することを条件に、上記のような太陽光発電の設置を含む諸々の費用を負担するというサービスを行うケースも見られるようになった。
エネファームは、お湯を沸かすと同時に発電も行うことができる高効率な給湯設備。太陽光発電と併用することでダブル発電が可能となり、それにより省エネルギーに貢献する暮らしができる。
いずれにせよ、電力自由化に伴い、サービスの充実とそれによる顧客の囲い込みを狙う事業者たちが住宅の太陽光発電の普及に注目していることが、上記のような事例からおわかりいただけると思う。
ところで、冒頭の「2030年に建築される新築戸建て住宅の6割に太陽光発電を導入」との方針について、少し深掘りをしておきたい。これは検討会による「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方(案)」で明示されたものだ。
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