住まいの「脱炭素化」なかなか進まない根本原因 政府は温室効果ガスの排出量、実質ゼロを提言
温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロとする。菅義偉首相は10月に行った所信表明演説でこのように宣言した。これにより、日本における脱炭素社会の実現へ向けた取り組み、省エネルギーの動きはいっそう加速すると考えられるが、それは住まいを含む民生分野においても同様だ。
そこで、この記事では戸建て住宅を中心にした、住まいにおける脱炭素社会実現への取り組みと課題についてまとめた。結論から言うと、住宅分野には課題が山積している。今後、30年の間に省エネ基準の義務化を含めた大きな変革が求められそうだ。
まず、これまでの経緯と現状を確認する。住宅を含む「家庭部門」のエネルギー消費量は、割合は産業部門や運輸部門などと比べ少ないが、量自体は1970年初頭に比べ約2倍となっており、いっそうの省エネ化が求められている。
対策となるのが、建物や暮らしの省エネ性の強化で、住宅については1980年(昭和55年)に省エネ基準が設けられたのを皮切りに、以降は1992年、1999年、2013年に改正・強化されてきた。
無断熱の住宅が3割を占める
とは言え、エネルギー消費量が増加したのは、戸数・世帯数が増えたことが要因。家電や設備機器の省エネ化はずいぶんと進んだが、核家族化と1人世帯の割合が増え、全体のエネルギー使用量が増えたからである。
では、日本にはどれくらいの住宅があり、省エネ化はどの程度進んでいるのだろうか。2018年(平成30年)の住宅・土地統計調査によると、このうち居住世帯のある住宅数(空き家を除いた住宅数)は5366万戸だ。
その内訳は一戸建て2876万戸(全体の53.6%)、共同住宅2334万戸(同43.5%)などである。
住宅(建物)の省エネ性の現状について、国土交通省の推計では全居住世帯のうち現行基準を満たすのは約1割にすぎない。
また、1980年の基準の性能を満たさない「無断熱」が約3割あるという(いずれも2017年時点)。そのため国は、中でも新築住宅の省エネ性強化に努めてきた。
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