住まいの「脱炭素化」なかなか進まない根本原因 政府は温室効果ガスの排出量、実質ゼロを提言

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ところで、今から30年前の1990年代前半はバブル景気がちょうど終焉を迎えたころだ。住宅の世界では少しずつ環境配慮に関心が払われるようになった時期で、太陽光発電の普及の端緒がこの頃だ。

その頃に比べ、現在普及が進んでいる住宅は前述のZEHをはじめ、「環境性能」自体はずいぶんと向上している。断熱素材や窓ガラス(サッシ)の省エネ性能についても同様だ。

冒頭で「課題が山積」とネガティブなことを中心に書いてきたが、そうした状況を考慮すると、楽観的かもしれないが、住宅については2050年の脱炭素化には一定の可能性があるとも考えられる。

住宅の断熱性能や、先進技術による1戸当たりの省エネ性のいっそうの向上に加え、再生可能エネルギーを効率的に活用でき、街全体の省エネを可能にするスマートグリッド(次世代送電網)の実現など、30年後にはさまざまな進展も期待できるからだ。

太陽光発電を搭載した賃貸住宅も少しずつだが増えている(写真:筆者撮影)

ただ、もちろん2050年にすべての住宅のゼロエネルギー化を実現するのは現実的ではなく、当然ながらそうではない住宅も相当数残るはずだ。そのため、何らかの手段で帳尻を合わせる必要があるだろう。

例えば、ゼロエネを達成できない住宅に住む世帯は「炭素税」を支払う、あるいは割高な電気料金というかたちで負担を求められるというケースも考えられる(FIT:再生可能エネルギー買取制度がそれに近い)。

省エネ基準適合の義務化は避けられず

また、近い将来、ZEHでなければ新築住宅を供給できなくなる、といったことが十分予想される。現行省エネ基準を施行する際、2020年に新築戸建て住宅で適合を「義務化」する議論があったからだ。

ZEHは補助金などがあるとは言え、初期取得費用が高額になることがネックで、それが住宅需要の減退を招くことを主な理由に先送りされたが、脱炭素化は世界的な要請であり、日本においても同様である。

よって、今後は住宅においても省エネ基準適合の義務化は避けられない状況だ。ちなみに、欧米主要各国ではすでに住宅の省エネ基準が義務化されているほか、ZEHの供給にもより積極的だ。中国や韓国などでも高水準の省エネ化が進んでいる。

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