住まいの「脱炭素化」なかなか進まない根本原因 政府は温室効果ガスの排出量、実質ゼロを提言

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以上は、一般の方からすると極端に思えるような話かもしれない。だが、脱炭素化社会が実現した30年後は、ZEHのような省エネ性の高い住宅に住むにせよ、そうでないにせよ、国民1人ひとりに相応の負担が求められる時代になることも予想されるのだ。

話を冒頭の菅首相による宣言に戻すと、その背景には地球温暖化対策がすでに待ったなしの状況になっていること、そしてSDGsや、環境保全の取り組みを重視するESG投資の考え方が広がっていることがある。

このほか、脱炭素の動きにより日本経済の活性化を図るという狙いもある。そのためには、建物というハードだけでなく、人々の考え方を含めたソフトの部分を変えていく必要があるとも考えられる。

脱炭素社会と住宅は無縁ではない

例えば、現状でZEH仕様の賃貸住宅は少ないわけだが、それは入居の際に選択肢がないことも影響している。具体的には、物件の省エネ性能についてわかりやすい情報提供が行われていないのが実情だ。

環境意識の高い若い世代を中心に、今後、「省エネ性が高い部屋に住みたい」などというニーズが高まると考えられるが、部屋選びの仕組みにそれが反映されると、この分野の省エネ化、ZEH化がより進むだろう。

いずれにせよ、住宅は暮らしに直結するという性格を持つだけに、地球温暖化の抑制、省エネルギー化による脱炭素社会の実現に無縁でないことは確か。今後30年で、ハード・ソフトのさらなる進化を期待したい。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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