複雑化する「住宅設備」快適になるはずが不便さも 住まいはユーザーフレンドリーになっているか
世の中の製品やサービスに用いられる技術やアイデアは日進月歩で進化している。それは住まいの分野も同様。だが、暮らしに密接なものだけにさまざまな機器が導入されることにより、住まいの中にはあまり使われないもの、場合によっては困った状況を巻き起こすものもある。
例えば、太陽光発電などを搭載した先進的な住宅「スマートハウス」。東日本大震災が発生した2011年以降に広まったもので、原発事故によるエネルギー問題への関心の高まりが普及の後押しとなった。
省エネ住宅の代表例として認知度が高まり、現在は家庭用蓄電池やエネファームなどと連携するものも登場している。その中核技術の1つにHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)がある。これは家庭内におけるエネルギーの需給状況を「見える化」するものだ。
需給状況はほぼリアルタイムで反映されるため、省エネや節電をするのに役立つ。専用モニターのほか、パソコンや携帯電話、タブレット端末でもエネルギーの状況を確認することができる。
あまり使われていないHEMS
ただ、省エネ意識の高まりからHEMSを導入した人の中には、そのメリットを感じることはあまりない人もいるようだ。例えば、2014年から太陽光発電を設置した省エネ住宅に入居しているAさんは、HEMSのある暮らしについて以下のように話している。
「暮らし始めた当初は太陽光発電がどのくらい発電しているのか、以前住んでいた住まいとの電気料金と比べてどれくらい節約できているのかを確認するのがとても興味深かったが、今はまったく見なくなってしまった」
長く暮らす中で省エネ生活に飽きてしまったからだ。住まいで何より大切なのは快適であること。省エネをするために生活をしているのではない。だから、HEMSは次第に使われない設備になってしまったのである。
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