住まいの「脱炭素化」なかなか進まない根本原因 政府は温室効果ガスの排出量、実質ゼロを提言
ここで現行省エネ基準の特徴について触れておく。これは建物の断熱性能に加え、エアコンや給湯器、照明などの設備機器が消費するエネルギーも含めた、建物全体の「1次エネルギー消費量」で省エネ性能を評価することを大きな柱としたものである。
住宅については2015年4月1日から施行されており、現在では建築主から施主への「省エネ基準への適否」の説明義務、事業者に供給する住宅の省エネ性能向上を促す措置「住宅トップランナー制度」もスタートしている。
同制度では注文戸建て、分譲戸建て、賃貸住宅で一定規模を供給する事業者に、現行省エネ基準の10~25%(種類により異なる)を削減すること、国土交通省への達成率の報告義務や罰則規定も設けられている。
省エネ住宅の決定版「ZEH」
もっとも、現行省エネ基準に適合する住宅ではゼロエネを達成することはできない。そこで、省エネ住宅の決定版として今、国や住宅事業者が普及に努めているのが、「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」だ。
これは、高断熱仕様の建物と高効率設備・家電により省エネを図り、さらに太陽光発電など創エネによる再生可能エネルギーで、1年間で消費する1次エネルギー量が正味(ネット)で概ねゼロ以下になる住宅のことを指す。
国はこのZEHについて、2020年までに新築注文戸建て住宅の半数以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指すとしているが、ではその普及状況はどうなっているのだろうか。
一社・環境共創イニシアチブがまとめた「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業調査発表会2020」の資料によると、2019年度のZEH供給戸数(注文戸建て)は約5.7万戸だとしている。
そのシェアは、持ち家(注文戸建てを表す)約28万戸の約20%(同年度の全新設住宅着工約88万戸の約6%)に相当するもので、これは2020年の「半数」達成にはまだほど遠い状況であることがわかる。
同資料によると、普及が進まない理由について事業者を対象に調査しているが、「顧客の予算」「顧客の理解を引き出すことができなかった」「体制不備」「工期の問題」「太陽光発電が足りなかった」などが上位に挙がっていた。
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