享年23歳の京大院生が遺した痛切なる「生きた証」 絶望的な状況、是非を問いかけるむき出しの思考

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山口さんが残した「ヨシナシゴトの捌け口」と「或る闘病記」、Twitter(筆者撮影)
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故人が残したブログやSNSページ。生前に残された最後の投稿に遺族や知人、ファンが“墓参り”して何年も追悼する。なかには数万件のコメントが書き込まれている例もある。ただ、残された側からすると、故人のサイトは戸惑いの対象になることもある。
故人のサイトとどう向き合うのが正解なのか? 簡単には答えが出せない問題だが、先人の事例から何かをつかむことはできるだろう。具体的な事例を紹介しながら追っていく連載の第12回。

大学入学の年に希少がんと診断された男性

<もっと生きたいと思いながら死ぬのか、もう死にたい、死んでもいいと思いながら死ぬのか、そのどちらかを選ばなければならないのだとしたなら、誰しもがきっと深く悩むことだろう。前者は相反する痛みの中にあり、後者は相反しないまた別の痛みの中にある。死ぬことが決めつけられてしまったとき、一体どちらが楽なのか、僕はそのことばかりをずっと考えて今日も生きている。まもなく来たるべき、その日のために。>
(2021年3月18日「グッドバイ」/ヨシナシゴトの捌け口)

「ヨシナシゴトの捌け口」(https://yoshinashigoto.hatenablog.jp/)というブログがある。京都大学に入学した山口雄也さんが、日々の随想を書きつづろうと1学年の夏に開設した。しかし、その数カ月後にがんの発症を告知され、図らずも闘病ブログとしての色彩を帯びるようになる。

山口さんは後に闘病専用のブログ「或る闘病記」(https://fight.hatenablog.jp/)も開設。最終的にはTwitter(https://twitter.com/Yuya__Yamaguchi)と、亡くなる3カ月前に始めたnote(https://note.com/yuya__yamaguchi/)を合わせ、発信源は4つとなる。それらを使い分け、ベッドから起き上がれない状態になっても発信を続け、息を引き取る1週間前まで「声」を残していった。

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深い思索とあけすけな心情をつづった山口さんのページは多くの反響と共感を呼んだ。新聞やテレビで取り上げられ、2020年7月にはNHK記者の木内岳志さんとの共著『「がんになって良かった」と言いたい』も刊行している。一方で、最晩年は強い言葉が物議を醸したりもした。その痕跡はいくつかの発信源に残っている。いや、後述するが、山口さんが意図的に残している。

賛否が分かれる痕跡。故人のサイトにそれが残されていたとき、どう向き合えばいいのだろう? 山口さんが残した「声」から考えていきたい。

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